『鐘の音を響かせ』
「聞いて驚くな。いや、やっぱり驚け。
エルメキアではお前のことが大変な扱いになってるようだ。
殺人罪で指名手配犯扱いになってるぞ。」
「殺人罪で指名手配っ!?俺がっ!?」
「実戦の経験は?」
「ベークランドを助けたときが初めてだ。
それにあの時は、
無我夢中だったからな。」
「……そうなんですの?」
「ど、どうでもいいだろそんなことっ!」
「照れるなよ、ボイス。」
「べ、別に俺は照れてなんか……」
「嘘の下手な奴は放っておいて、読み上げるぞ。
592年3月18日、エルメキアにて大量殺人罪で逮捕。
翌日、脱走。現在行方不明。」
「……去年の3月18日?
俺はその日、このシルバニアにいた。
この街から一歩たりとも出てはいない。」
「ああ。
俺達が二人で原始魔導協会を鎮圧して
朝まで徹夜で始末書書いてたあの日だろ?」
「私もちゃんと覚えているわ。その日で間違いないはずよ。」
「俺がその日に、エルメキアに捕らわれている?
いったいどういうことなんだ。
もう一人の、俺がいる?」
「……ドッペルゲンガー。
心理学の言葉で、心理投影した自分をみてしまうこと。
魔導学の言葉では、理力体の抜け落ちた肉体組織、あるいはその逆。」
「けど、確か魔導学の定義では……」
「ええ。理力体を失った肉体は呼吸は出来ても、
自我や意識を保つことは出来ない。
ボイスさん、私の目の前にいる貴方のようには。」
「だが俺はここにいる。
もう一人の俺なんか見たとはない。
……けど、俺がもう一人いるのかっ!?」
「ボイス、確かお前の父親は王立軍の人間だったよな。」
「何がいいたい、レオン?」
「いや、
もしかするとお前の父親が、
何か知っているんじゃないのか?」
「親父が……?」