Forbidden Palace Library #00 「失われた7枚」シリーズ 外伝

『鐘の音を響かせ』



王都住宅街
ハーシェル邸


だだだっ

ばたんっ

ボイス 「親父っ!!」

ボイス父親 「……おお、ボイスか?どうした?息を切らせて?」

ボイス 「親父、俺は誰なんだ?」

ボイス父親 「???
 何を言っている?
 お前はボイスじゃないか。」

ボイス 「違う。教えてくれ、本当の俺は誰なんだ!?」

ボイス父親 「…………ボイス?」

ボイス 「俺には、俺の知らない過去がある。
 俺が幼少を過ごしたはずのブランドブレイのことも、
 大量虐殺を起こしたことになってるエルメキアの記憶も!」

ボイス父親 「…………。」

ボイス 「それどころかきちんとした幼少の頃の記憶すらない!
 俺の持っている記憶は俺の戸籍と一致しない!
 俺は、俺は誰なんだ!?答えてくれ、親父っ!!!」

ボイス父親 「お前のその髪の色は、間違いなくわしの息子だ。
 ハーシェル家の血を引き、わしの妻との間に生まれた。
 それがお前だよ。」

ボイス 「そんな理由じゃ納得できない!
 どうして俺には俺の知らない過去があるんだ!?
 俺は、誰なんだ!?」

ボイス父親 「…………説得力に、欠けるか。
 この時が来てしまったようだな。
 いつか気づくときは来ると思っていたが……。」

ボイス 「……どういうことだ?」

ボイス父親 「ボイスという人間は、戸籍ではハーシェル家の長男となっている。」

ボイス 「…………。」

ボイス父親 「だが、お前は長男ではない。
 本当のお前は長男ボイスの後に生まれた、
 ハーシェル家の次男なのだ。」

ボイス 「……次男?
 ちょっと待て、どういうことだ!?
 じゃあ、長男は!?」

ボイス父親 「…………。」

ボイス 「答えろ、親父!!!」

ボイス父親 「………………ラウド [Loud]。」

ボイス 「え?」

ボイス父親 「ラウド=ハーシェル。
 ハーシェル家の次男。
 それがお前の本当の名前だ。」

ボイス 「!?」

ボイス父親 「本当のボイス=ハーシェル、ハーシェル家の長男は、
 シュレディンガー家の道場を出奔して以来絶縁状態だ。
 最近またブランドブレイに戻ったという情報もあるが……定かではない。」

ボイス 「!!!」

ボイス父親 「ラウド……すまない。」

ボイス 「親父、じゃあ――俺の戸籍は……?」

ボイス父親 「――お前は10年前に、死んだことになっている。」

ボイス 「!!!
 そんな……。
 でも、俺はここに生きてるぞ!!」

ボイス父親 「だが戸籍上は病死ということで処理されている。
 死因が失踪ならともかく、
 病死でいまさら死亡を取り消すことはできない。」

ボイス 「……親父。その病死とやらも、
 もしかしてハーシェル家の名誉のために
 でっちあげられたのか……?」

ボイス父親 「そうだ。まさかこんな事になるとは……すまない。
 ラウド=ハーシェルはもう、
 二度と地上に存在しないはずの人間なのだよ……。」

ボイス 「そ……んな…………。」


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