『鐘の音を響かせ』
「背中にそんな重い剣を差して……行く気だな。」
「ああ。」
「既に一戦を交える覚悟すらあるといとうことか。」
「…………。」
「一つ、悪い知らせがある。」
「?」
「お前の親父さんだがな、
どうやら一足先にブランドブレイへ向かったらしい。
恐らくシュレディンガー邸に行ったはずだ。」
「まさかっ!!!」
「間違いない。お前の探すそいつは、恐らくそこにいる。」
(早く、追いつかないと!)
「厩舎の前に、師団で一番足の速い馬を待機させてある。
特権違反かもしれんが、今は一刻を争うんだろ?
あとの処理は俺がしておく。」
「……恩に着る。」
「そういう事は帰ってきてからでいい。」
「わかった。」
「それと――イーディスには会わなくていいのか?」
「……構わん。」
「冷たいな。」
「いま会えば、俺の決心が揺らぐ。」
「ならば伝言は?」
「……必ず戻る。
だから、待っていてくれ、と――
伝えておいてくれ。」
「……わかった。」
「じゃあな、行って来る。」
「おう、行って来い。」
「…………。」
「だとよ、イーディス。もう出てきても平気だぞ。」
「……大丈夫です。
私、信じていますから。
あの人のこと、すべて。」
「心底愛してるんだな、あいつを。」
「ええ。もちろんです。」
「ひゅー。羨ましい話だな。」
「……ハーシェルさん。いえ、ラウドさん。
ミルククッキー作って、待ってます。
だから絶対に、戻ってきてください――。」