『鐘の音を響かせ』
「! ボイス……来るな―――ぐふっ。」
「親父っ!!!」
「ほう、お前がもう一人のボイスか。
お前が生まれたとき、俺はもう親父の元にはいなかったから、
会うのはこれが初対面だったな。」
「!!!
おいっ!
親父になにをしたっ!!!」
「なに、
ただ眠って貰っただけさ。
永遠にな。」
…………。
「!!!」
「本当なら、お前の次に殺していたはずだったんだけどな。
1年前のあの時――せっかくの知識を手に故郷へ戻ってみれば、
組織はもうそこにはなかった。」
「組織?」
「仲間は作戦に失敗し無駄死にしてたとは……。」
「仲間……?」
「ああ。
一年前、お前らが潰してくれた組織だ。
覚えてないとは言わせないぞ。」
「原始魔導協会っ!!!」
「エルメキアでメルフィアに関する情報をやっと入手できたと思った矢先、
いきなり法兵ども俺を捕まえやがって。
ま、奴らも個別に撃破すれば大したことなかったけどな。」
「!!!」
「見せしめに何人か殺してやったが、
何週間も追跡されたお陰で
シルバニアでの合流に間に合わなかった。」
「!!! 見せしめだと!?
人の命に見せしめなどねぇっ!
命は軽々しく扱うものではないっ!!」
「口だけは立派だな。
ならば聞くがな、恋人と赤の他人の命、
お前にとって等価か?同じ重さなのか?」
「!!!
……まさか、あの時、
イーディスがさらわれたのは!?」
「なに、使える手駒は多い方がいいと思ってな。
お前が余計な自己主張を始める前に、
それらしき女を餌にしておびき寄せ殺しとこうと思ったんだが。」
「!」
「一人ではなく、仲間と一緒だったとは予想外だったみたいだな。
そしてあのイーディスとかいう女の予想外の理力許容量。
その後で親父も殺すはずだったが、全てが番狂わせだ!」
「まさか、全てお前が仕組んだのか!?」
「……あの証拠隠滅で、重要な魔導資料もいくらか失った。
失敗の代償は小さくない。
だが、今ここで全て取り返せば済む!」
「!!!」
「生き証人がのこのこと二人も出てきてくれたのだからな。
ははっ、まったく。親子だけあって行動が似ている。
だが――それも、今日までだ。」
「!」
「親父は殺した。
あとは、出来の悪い弟を……
いや、偽物の俺を殺すだけだ。」
「!!!」