『鐘の音を響かせ』
「!?
……何を寝言を。
親父から全てを聞いたんだろう?」
「ボイスは、お・れ・だ。」
「そうか――だが、俺もボイスだ。
その肉厚の大きな剣一本でどうするつもりだ?
果たしてお前に、その剣が抜けるのか?」
「…………抜くために、剣はある。」
「…………。」
「どうやら本気みたいだな。
いいだろう。なにばこっちも本気で応えないとな。
お前をこの剣の餌食にしてくれる。」
(なんだ、あの見慣れない鞘の色と形は――?)
「見るがいい、この色なき剣の御姿を。」
「なっ!!」
「――驚いたか?」
「透明な、刀身!?」
「こいつの名前はな、
『ライト・レインエッジ(Right Lein-Edge)』。
かの銀狼帝が愛用したという『右』の剣だ。」
「!!!」
「カイザリア初代皇帝、銀狼レイン。
彼の死後、行方不明になっていた左右2本の剣。
そのうちの右のひと振りが、ここにある。」
「……なんで、そんなものがここにある!?」
「150年ほど前、当時のシュレディンガー家の当主が、
どこか人には言えないルートで手に入れてきたらしい。
それから代々伝わる家宝になってたみたいだがな。」
「まさか……その当主を殺して、この剣を!?」
「……そこまで知っているのか。
ならば尚更のこと生かしてはおけんな。
親父と同じくこの絨毯の上で死を迎えるがいい。」
「!」
「丁度いいことに、いまこの屋敷には誰もいない。
あの口やかましいグロリア嬢も旅行で留守だ。
つまり――目撃者は誰もいない。」
「……その令嬢が、
自分の父親を殺したのがお前だと知ったなら、
悲しむだろうな。」
「なに、こうするさ。
シュレディンガーの当主を殺したのは偽物のボイスで、
俺はそいつを倒して仇を討ちましたってな。」
「!!!」
「ボイス=ハーシェルは、
二人もいらない。
つぁああああああっ!!!」