Forbidden Palace Library #00 「失われた7枚」シリーズ 外伝

『失われた7枚』if 〜昔話編 その3〜



・大陸歴324年編


むかしむかし、あるところにシンデレラという女の子がいました。

ローラ 「……え?あたし?」


ええ、そうです。
小さい頃本当の母親を亡くしたシンデレラは、継母と二人の姉にいつもいじめられていました。

オーロラ 「おほほほほ。
 ローラ……ではなくてシンデレラ、
 ちょっとリモコン取ってくださらない?」


……リモコンって……時代考証無視してません?


ローラ 「で、もう一人の姉って誰?」


フランソワ 「るんるんるん☆」


ローラ 「…………。」

オーロラ 「…………。」

ローラ 「……ちょっと……無理あるよねぇ、オーロラおねぇちゃん。」

オーロラ 「え、ええ。私もその様に思いますわ。」

フランソワ 「あら?何か言ったかしらぁ?」

ローラ 「だからおかぁさん、人のこと足で踏むのやめてよね。」

オーロラ 「ローラの言う通りでしてよ。」

フランソワ 「フランソワお姉さまとお呼びなさい。」


前言撤回。
シンデレラとその姉は、一番上の姉にいつもいじめられていました。

ローラ 「じゃあ継母は誰がやるの?」


…………。
そんなある日、お城から舞踏会の招待状が届きました。

ローラ 「あー、無視したぁーっ!」

オーロラ 「……今度の舞踏会、王子様がお嫁さん探しするそうでしてよ。」

ローラ 「え?王子様って……誰?」


貴方達と同じ時代の人間で、まだここに出てきていない人物ということですね。

ローラ 「……なんか凄くいやな予感するんだけどぉ……」


気のせいです。
それにまだ登場していない人物は6人もいるじゃないですか。
ほら、可能性は6分の1。

ローラ 「それって何の可能性?」


………………。
継母と二人の姉たちは早速ドレスの準備にとりかかりました。

ローラ 「あー、無視したぁー!」

フランソワ 「るんるんるん☆」

オーロラ 「……ローラ、少々無理があると思いませんこと?」

ローラ 「うん。かなり、ね。」

フランソワ 「あらぁ?いま何か言ったかしらぁ?」

ローラ 「だからおかぁさん、人のこと踏まないでくれない?」

オーロラ 「綺麗なフランソワお姉さま、その足をどけていただけませんこと?」

フランソワ 「あら、綺麗だなんて……本当の事言われたら仕方がないわねぇ。るんるん☆」

オーロラ 「……シンデレラ、お世辞はこの様に使うものでしてよ。」

ローラ 「さすがオーロラおねぇちゃん。」

フランソワ 「あら?何か言ったかしら?」

ローラ 「ううん、別に。……なんか凄く嫌な予感するから行くのやめよっかなぁ。」

オーロラ 「おほほほほ、でしたら貴方の分もケーキを食べてきて差し上げますわ。」

ローラ 「え?ケーキ食べ放題なの!?」

オーロラ 「おほほほほ、パンフレットにはそう書いてありましてよ。」

ローラ 「行く行くっ!ところであたしのドレスは?」

フランソワ 「あら、まだ洗濯屋さんに出したままだったわ。」

ローラ 「えーーーーっ!じゃあ今すぐ取ってくるっ!」

オーロラ 「おほほほほ、確か今日は休業日のはずですわ。」

ローラ 「……って、あーーーっ!二人とももう着替えてるー!ずるいー!」

フランソワ 「るんるんるん☆」

ローラ 「…………。」

オーロラ 「…………おほほほほ。」

フランソワ 「あら?どうしたの?二人とも私のこと見つめちゃって?そんなに綺麗?」

ローラ 「本人が喜んでいるんだからそっとしておこうか、オーロラおねぇちゃん。」

オーロラ 「ええ、きっとその方が懸命でしてよ。」

フランソワ 「じゃあ行って来るわね☆ るんるん☆」

ローラ 「あっ!ずるいっ!」

オーロラ 「おほほほほ。」


というわけで姉と……姉は出かけていきました。

フランソワ 「あらぁ?その間はなにかしら?」


気のせいです。
とにかく、姉二人は出かけてしまいました。

ローラ 「……魔法使いのおねぇちゃん、早く来てよー。」


い、いきなり他力本願ですね……。

セディ 「ふっ、この私に何か用かな?」

ローラ 「……おっちゃん、女性だったの?」

セディ 「ふっ、失礼な。
 私はれっきとした男性だ。だが、おっちゃんではない。
 美しく頭脳明晰なセディ様と呼びたまえ。」

ローラ 「じゃあ女装趣味?」

セディ 「ふっ。_
 何故そうなる。
 こうでもせんと出番がないから魔女の役をやっているだけだ。」

ローラ 「魔女だったら帽子かぶってなきゃ。」

セディ 「ふっ。いちいちうるさいやつだな。帽子ぐらい我慢しろ。」

ローラ 「おっちゃん、帽子の一つも持ってないのー?」

セディ 「ふっ。
 本当なら私に受け継がれるはずだった我が師匠の帽子は行方不明なのだ。
 見つかっていればとっくにかぶっている。」

ローラ 「よくわかんないけど、いいからドレスと馬車ちょうだい。
 ドレスは出来ればピンクハウスのウェディングドレスみたいなやつね。
 ほら、渋谷のお店の二階へ上がる階段の所に展示してあったやつ。」

セディ 「ふっ。
 知るかそんなもの。
 第一、そんなローカルな話されて分かると思うのか?」


だから時代考証無視しないでくださいってば。

ローラ 「えー、女装趣味なのにそんなことも知らないのぉ?」

セディ 「ふっ。だから誰が女装趣味だっ!」

ローラ 「で、とにかくふりふりのドレスね。リボンいっぱいついたやつ。
 あと靴のヒールはちょっと低めにしてね。こけるといやだから。
 それと髪飾りはプラチナのやつ。あとネックレスは……」

セディ 「ふっ。我が儘を言うな。これで我慢しろ。」

ローラ 「……ま、70点ってところね。じゃあ着替えるから見ないでよ?」

セディ 「ふっ。誰が子供の着替えなど見るか。」

ローラ 「……え?違うの?そういう趣味かと思ってた。」

セディ 「ふっ。そうか、それほどまでにこの私に楯突きたいというか。」

ローラ 「とにかくみちゃだめよー!」


…………。

ローラ 「じゃーん☆どお?」

セディ 「ふっ。馬子にも衣装とはよく言ったものだ。」

ローラ 「あー、失礼ねー。とにかく早く馬車出してよ。」

セディ 「ふっ。いちいちうるさいやつだな。」

ローラ 「で、馬車は?」

セディ 「ふっ。これだ。」

ローラ 「……かぼちゃぁ?」

セディ 「ふっ。わかった。乗らないならそれでも結構。」

ローラ 「わかったよぉ。乗ればいいんでしょ、乗れば。」

セディ 「ふっ。では御者、頼んだぞ。」

メンデル 「……俺、御者の役か。」

ステュアート 「お前はまだいいじゃん。馬の役の俺はどうなる?」


知りません。



そして場面は代わってお城。

ローラ 「やっと着いたー。ケーキケーキ。」

オーロラ 「あら、ローラではありませんこと?」

ローラ 「あ、オーロラおねぇちゃんだ。おかぁ……フランソワおねぇさまは?」

オーロラ 「あそこで殿方達とご歓談されていますわ。」

ローラ 「……あとでおとぉさんに言いつけようね。」

オーロラ 「ええ、もちろんですわ。
 王子様は私のものですわ。
 ただし格好よかったらの話ですけれども。」

ローラ 「……隣のおにぃちゃんに言いつけてやる。」

オーロラ 「おほほほほ。」

ローラ 「で、料理はどこ?食べ放題なんでしょ?
 あ、ショートケーキみっけっ!
 ぱくぱくぱくぱく」

オーロラ 「おほほほほ、シンデレラ、食い意地がきたなくってよ。」

ローラ 「そういえばオーロラおねぇちゃん、
 このあいだあたしが後で食べようと思ってとっておいたアップルパイ
 勝手に食べたのオーロラおねぇちゃんでしょーっ!」

オーロラ 「おほほほほ、嫌いなのかと思って食べて差し上げただけですわ☆」

ローラ 「あー、ひどーい!」

フランソワ 「あら、王子様。」

ローラ 「……えっ!」

サード 「今宵はよくぞ暗い夜道を歩いてもし水たまりとかでこけたら大変だろうなぁ。
 しかもそれがお城の真ん前だったら……これは困った問題だ。
 入ろっかやめよっか考え中。でも負けない。」

ローラ 「あたし帰る。」

サード 「いやいや、ドレスの些細なシミなど気なんかならないさ。
 どうしても気になるというのであれば、お城にあるドレスを貸して上げよう。
 そう、君がたとえ頬にクリームをつけていたとしても。」

ローラ 「えっ、ええっ!?」

オーロラ 「おほほほほ、そこですわ、そこ。」

ローラ 「オーロラおねぇちゃん、気づいていたんなら教えてよっ!」

オーロラ 「あら、それも化粧かと思っていましたわ。おほほほほ。」

サード 「ああ、王子としてはここでお嬢さんの頬についたクリームを
 口づけで取って上げるべきかそれとも指で梳くってそのあとどうしよう
 まさか舐めるわけにもいかないし、よってこの意見却下とする。」

ローラ 「ごしごしごし、はい、これで取れたでしょっ!」

サード 「……額にもクリームが、」

ローラ 「ええっ!?」

サード 「もしついていた場合にはどうすればいいんだろうか。
 これは困った。どうしよう。出来れば見なかったことにしてあげたい。
 でも他の人が気づいたら……。議長、どうしましょう。ところで議長って誰?」

オーロラ 「おほほほほ、わたくしに聞かれても存じません事よ。」

サード 「そんなわけでお嬢さん、俺と踊ってはいただけませんか?
 別に高枝切りバサミもって踊るとか言っているんじゃないからね。
 あ、でも包丁12本セットの踊りとか言われたらどうしよう。」

ローラ 「……やっぱり帰るっ!
 こんな王子様いやーーーーっ!
 この王子様オーロラおねぇちゃんにあげるっ!」

オーロラ 「おほほほほ。
 わたくしよりもローラの方がお似合いでしてよ。
 というわけで王子様、この子を差し上げますわ。」

サード 「ありがとう。じゃあ遠慮なく。よいしょっ。」

ローラ 「き、きゃっ!?ち、ちょっとー、下ろしてよーっ!」

サード 「抱きかかえられるよりも背負われた方がいいと言うのか?
 いや、でもそうするとキスとかできないなぁ。首はそんなに回らないし
 それで むちうちになったらどうしよう。でも負けない。」

ローラ 「そーゆー問題じゃなくてーっ!
 って、
 なんであたしがあんたとキスしなきゃいけないのよーっ!」

オーロラ 「セオリーですわ。おほほほほ。」

ローラ 「そんなセオリー知らないーっ!」

フランソワ 「うちの子をよろしくお願いしますわね、王子様。」

オーロラ 「シンデレラ、幸せにね。おほほほほ。」

こうしてシンデレラは王子様と末永く幸せに暮らしましたとさ。 めでたしめでたし。

ローラ 「めでたくなぁいっ!」



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