『失われた7枚』if 〜昔話編 その3〜
・大陸歴324年編 |
「……え?あたし?」
「おほほほほ。
ローラ……ではなくてシンデレラ、
ちょっとリモコン取ってくださらない?」
「で、もう一人の姉って誰?」
「るんるんるん☆」
「…………。」
「…………。」
「……ちょっと……無理あるよねぇ、オーロラおねぇちゃん。」
「え、ええ。私もその様に思いますわ。」
「あら?何か言ったかしらぁ?」
「だからおかぁさん、人のこと足で踏むのやめてよね。」
「ローラの言う通りでしてよ。」
「フランソワお姉さまとお呼びなさい。」
「じゃあ継母は誰がやるの?」
「あー、無視したぁーっ!」
「……今度の舞踏会、王子様がお嫁さん探しするそうでしてよ。」
「え?王子様って……誰?」
「……なんか凄くいやな予感するんだけどぉ……」
「それって何の可能性?」
「あー、無視したぁー!」
「るんるんるん☆」
「……ローラ、少々無理があると思いませんこと?」
「うん。かなり、ね。」
「あらぁ?いま何か言ったかしらぁ?」
「だからおかぁさん、人のこと踏まないでくれない?」
「綺麗なフランソワお姉さま、その足をどけていただけませんこと?」
「あら、綺麗だなんて……本当の事言われたら仕方がないわねぇ。るんるん☆」
「……シンデレラ、お世辞はこの様に使うものでしてよ。」
「さすがオーロラおねぇちゃん。」
「あら?何か言ったかしら?」
「ううん、別に。……なんか凄く嫌な予感するから行くのやめよっかなぁ。」
「おほほほほ、でしたら貴方の分もケーキを食べてきて差し上げますわ。」
「え?ケーキ食べ放題なの!?」
「おほほほほ、パンフレットにはそう書いてありましてよ。」
「行く行くっ!ところであたしのドレスは?」
「あら、まだ洗濯屋さんに出したままだったわ。」
「えーーーーっ!じゃあ今すぐ取ってくるっ!」
「おほほほほ、確か今日は休業日のはずですわ。」
「……って、あーーーっ!二人とももう着替えてるー!ずるいー!」
「るんるんるん☆」
「…………。」
「…………おほほほほ。」
「あら?どうしたの?二人とも私のこと見つめちゃって?そんなに綺麗?」
「本人が喜んでいるんだからそっとしておこうか、オーロラおねぇちゃん。」
「ええ、きっとその方が懸命でしてよ。」
「じゃあ行って来るわね☆ るんるん☆」
「あっ!ずるいっ!」
「おほほほほ。」
「あらぁ?その間はなにかしら?」
「……魔法使いのおねぇちゃん、早く来てよー。」
「ふっ、この私に何か用かな?」
「……おっちゃん、女性だったの?」
「ふっ、失礼な。
私はれっきとした男性だ。だが、おっちゃんではない。
美しく頭脳明晰なセディ様と呼びたまえ。」
「じゃあ女装趣味?」
「ふっ。_
何故そうなる。
こうでもせんと出番がないから魔女の役をやっているだけだ。」
「魔女だったら帽子かぶってなきゃ。」
「ふっ。いちいちうるさいやつだな。帽子ぐらい我慢しろ。」
「おっちゃん、帽子の一つも持ってないのー?」
「ふっ。
本当なら私に受け継がれるはずだった我が師匠の帽子は行方不明なのだ。
見つかっていればとっくにかぶっている。」
「よくわかんないけど、いいからドレスと馬車ちょうだい。
ドレスは出来ればピンクハウスのウェディングドレスみたいなやつね。
ほら、渋谷のお店の二階へ上がる階段の所に展示してあったやつ。」
「ふっ。
知るかそんなもの。
第一、そんなローカルな話されて分かると思うのか?」
「えー、女装趣味なのにそんなことも知らないのぉ?」
「ふっ。だから誰が女装趣味だっ!」
「で、とにかくふりふりのドレスね。リボンいっぱいついたやつ。
あと靴のヒールはちょっと低めにしてね。こけるといやだから。
それと髪飾りはプラチナのやつ。あとネックレスは……」
「ふっ。我が儘を言うな。これで我慢しろ。」
「……ま、70点ってところね。じゃあ着替えるから見ないでよ?」
「ふっ。誰が子供の着替えなど見るか。」
「……え?違うの?そういう趣味かと思ってた。」
「ふっ。そうか、それほどまでにこの私に楯突きたいというか。」
「とにかくみちゃだめよー!」
「じゃーん☆どお?」
「ふっ。馬子にも衣装とはよく言ったものだ。」
「あー、失礼ねー。とにかく早く馬車出してよ。」
「ふっ。いちいちうるさいやつだな。」
「で、馬車は?」
「ふっ。これだ。」
「……かぼちゃぁ?」
「ふっ。わかった。乗らないならそれでも結構。」
「わかったよぉ。乗ればいいんでしょ、乗れば。」
「ふっ。では御者、頼んだぞ。」
「……俺、御者の役か。」
「お前はまだいいじゃん。馬の役の俺はどうなる?」
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「やっと着いたー。ケーキケーキ。」
「あら、ローラではありませんこと?」
「あ、オーロラおねぇちゃんだ。おかぁ……フランソワおねぇさまは?」
「あそこで殿方達とご歓談されていますわ。」
「……あとでおとぉさんに言いつけようね。」
「ええ、もちろんですわ。
王子様は私のものですわ。
ただし格好よかったらの話ですけれども。」
「……隣のおにぃちゃんに言いつけてやる。」
「おほほほほ。」
「で、料理はどこ?食べ放題なんでしょ?
あ、ショートケーキみっけっ!
ぱくぱくぱくぱく」
「おほほほほ、シンデレラ、食い意地がきたなくってよ。」
「そういえばオーロラおねぇちゃん、
このあいだあたしが後で食べようと思ってとっておいたアップルパイ
勝手に食べたのオーロラおねぇちゃんでしょーっ!」
「おほほほほ、嫌いなのかと思って食べて差し上げただけですわ☆」
「あー、ひどーい!」
「あら、王子様。」
「……えっ!」
「今宵はよくぞ暗い夜道を歩いてもし水たまりとかでこけたら大変だろうなぁ。
しかもそれがお城の真ん前だったら……これは困った問題だ。
入ろっかやめよっか考え中。でも負けない。」
「あたし帰る。」
「いやいや、ドレスの些細なシミなど気なんかならないさ。
どうしても気になるというのであれば、お城にあるドレスを貸して上げよう。
そう、君がたとえ頬にクリームをつけていたとしても。」
「えっ、ええっ!?」
「おほほほほ、そこですわ、そこ。」
「オーロラおねぇちゃん、気づいていたんなら教えてよっ!」
「あら、それも化粧かと思っていましたわ。おほほほほ。」
「ああ、王子としてはここでお嬢さんの頬についたクリームを
口づけで取って上げるべきかそれとも指で梳くってそのあとどうしよう
まさか舐めるわけにもいかないし、よってこの意見却下とする。」
「ごしごしごし、はい、これで取れたでしょっ!」
「……額にもクリームが、」
「ええっ!?」
「もしついていた場合にはどうすればいいんだろうか。
これは困った。どうしよう。出来れば見なかったことにしてあげたい。
でも他の人が気づいたら……。議長、どうしましょう。ところで議長って誰?」
「おほほほほ、わたくしに聞かれても存じません事よ。」
「そんなわけでお嬢さん、俺と踊ってはいただけませんか?
別に高枝切りバサミもって踊るとか言っているんじゃないからね。
あ、でも包丁12本セットの踊りとか言われたらどうしよう。」
「……やっぱり帰るっ!
こんな王子様いやーーーーっ!
この王子様オーロラおねぇちゃんにあげるっ!」
「おほほほほ。
わたくしよりもローラの方がお似合いでしてよ。
というわけで王子様、この子を差し上げますわ。」
「ありがとう。じゃあ遠慮なく。よいしょっ。」
「き、きゃっ!?ち、ちょっとー、下ろしてよーっ!」
「抱きかかえられるよりも背負われた方がいいと言うのか?
いや、でもそうするとキスとかできないなぁ。首はそんなに回らないし
それで むちうちになったらどうしよう。でも負けない。」
「そーゆー問題じゃなくてーっ!
って、
なんであたしがあんたとキスしなきゃいけないのよーっ!」
「セオリーですわ。おほほほほ。」
「そんなセオリー知らないーっ!」
「うちの子をよろしくお願いしますわね、王子様。」
「シンデレラ、幸せにね。おほほほほ。」
「めでたくなぁいっ!」