TITLE: 第13の機構 −街路に潜む水難事件−

大陸歴 599 11 07 ブランドブレイ王国
首都ブランドブレイ
沿岸貿易街
大陸標準時 11:30 am

MESSAGE:
「あ、お兄ちゃん!
 支柱ふりまわしたおじちゃんと、じょうろをもったおひげのおじいさん、
 こっちに逃げたですっ!」
「!!!」
「そこかっ!!!」

どんっっっ

「いてて…………!」
「なんじゃなんじゃ、一体何がおこっとるんじゃ?」
「捕まえたぞっ!!!」
「むむっ! 逃げきれないとは……不覚。」
「わーい、リタお手柄ですー!」
「……ちょっと整理させてくれないか。
 コペルニクス2月騎士団長、事件について閉口していた
 貴方が犯人ではなかったのですか?!」
「いや……実は余ではない。余のバカ親が……。」
「親に向かってバカとはなんじゃいっ!
 わしゃまだぼけとらんっ!」
「いや、誰もそんなこと聞いていないって。
 ……ん?親?
 ということは、ひょっとして2月騎士団前騎士団長?」
「そうじゃ。
 ぼけとらんからの、わしゃ。」
「だから誰もそんなこと聞いていないって。
 ……説明して頂けますか、何故あんなことをしたのか。
 そのせいで怪我人も出ているんです。」

(全治2時間の超軽傷だけど……。)
「あんなことってどんなことじゃ?」
「水たまり連続発生事件の顛末です。」
「なんだかたいそうな名前がついた事件です。
 でも実際は大したことないです。」
「それは言わない約束だ、リタ。」
「ああ……あれは、そうじゃな……うさばらしじゃよ。」
「は?」
「だってわしが可愛い初孫にじょうろでミルクやろうとすると、
 初孫の親、つまりうちの息子が怒るんじゃもん。」
「……マティルダの言っていたその話、本当だったのか?」
「その話は事実だ。親の立場であれば怒るのは当然だ!」
「なにを言うか、クラウディオっ!
 わしはお前を育てたときもじょうろでミルクを与えていたぞっ!」
「だからって孫のメイナードにまで同じコトする必要ないであろうっ!」
「そうやって成長するまでわしを孫に近づけさせないつもりかっ。
 ……そうじゃ、だからうさ晴らしに
 じょうろで水蒔いて遊んでおったんじゃい。」
「……つまり、犯人が自分の親で
 しかも実はただの水遊びだったというあまりの情けなさ故に
 調査依頼が回ってきた後も、ずっと事件の真相を隠し続けていたと?」
「前騎士団長が水遊びしているだけなどと知られたら一族の恥だからな。」
「水遊びすると、おねしょするです。」
「……それは火遊びだ。」
「ほれ、なんじゃ。
 お前もこれだけ周囲に迷惑かけたのだから
 そろそろわしにミルクの世話を任せてくれてもよいんではないかのぉ……」
「っていうかじょうろは植木に水を与えるための物だろ?」
「そうじゃったのか?」
「……知らなかったのか、おい?」
「わしは今日、新たな発見をした。
 そうか、じょうろとは植木に水をやるものじゃったのか。」
(……大丈夫なのか、このじーさん)
「いいか、何があってもメイナードにじょうろでミルクをやることは絶対に認めんっ!
 もうすぐ妻の実家で次男ジェラードも生まれるというのに!
 せめて次男は普通に小さい頃から支柱で遊ばせのびのびと育ててみせる。」
「それのどこが普通なんだよ。朝顔じゃないんだからさ。」
「なにぃ、わしゃまだぼけとらんっ!」
(……じーさんはじーさんで人の話聞いてないし。
 まぁとりあえず犯人も判明したし、報告に戻るとするか。
 ……あー、頭痛い。)
「リタ、お兄ちゃんのお手伝いしたです。
 少しは役に立ったです!
 弟子にしてくださいです!」
「……わかったわかった、じゃあ『弟子代理見習い』な。」
「わーい、弟子代理見習いですー。
 とても嬉しいリタちゃんなのでした。」
「……やれやれ。」

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イベント名『現行犯逮捕』
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