「ほほほほほ、ついに見つけましてよっ!」
「ちっ!もう来たかっ!
おい、いいか、動くな。
動くとこの魚屋のおやじの命がないぞ。」
「あわあわあわ」
「ふっ、愚かなり。カイザリアの兵士もここまで落ちたか。」
「何ぃっ!?何故、俺達がカイザリアの兵士だと知っているっ!?」
「お前がさっき大声で叫んだろうがっ!」
「むぅ……。
と、とにかくっ!
この親父の命が惜しければおとなしくするんだっ!」
「ふっ。カイザリア帝国の兵士が
他国の領土でそのような振る舞い、許されると思うのか?
場合によっては外交問題にすら発展するぞ。」
「む、むう……。」
「確かにそれはまずいな。
我々の目的が無になるどころか逆効果になってしまう。
……わかった。事情を話そう。そしたら我々を見逃してくれ。」
「ふっ。話の内容にもよるがな。」
「おいっ!いいのかっ!?」
「お前がさっきからぺらぺらぺらぺらと色々喋るのが原因なんだぞっ!
本国に帰ったら覚えてろっ!
……セディ、と言ったな。当然青き民の伝承は知っているな?」
「ふっ。無論。
青き民エンディルが異世界より侵略し、
そして当時この大陸全土を支配していた統一国家は滅びた。」
「……伝承を信じればの話だが、
かの統一国家、ラファエル王国が滅び去る間際、
時の王国宰相がこう言い残したという。」
「奴らは300年後、再びこの地へと攻めてくる可能性が高い、と
それが大陸歴元年の話。そして今は大陸歴314年。
つまり、いつ奴らが攻めてきてもおかしくない時期だ。」
「ふっ。
……一字一句を完璧に伝えているとは、感心に値するな。
そして来るべき日に備えて魔導原本を集めている、貴様はそう言うのか?」
「ああ。そうだ。」
「……もう一つの理由は黙ったままにするんだよな?」
「ほう。もう一つの理由だと?」
「大・馬・鹿・野・郎っ! それ言ったら意味ないだろうがっ!」
「ふっ、是非とも聞かせて貰おう、その理由とやらも。」
「べ、別に銀狼帝の至上命令だからとかじゃないんだぜ。」
「銀狼帝? ああ、カイザリア帝国の建国者レインの事か。
奴はとうの昔に鬼籍へと入ってるはずだが……。
なるほど、生前にそんな遺言を残していたとは。」
「……やっぱりこいつとのコンビ解消しよう。」
「……なんか難しい話してるねー。」
「そうですわね。ほほほほほ。」
「あわあわあわ」
「ふっ。大体事情は理解した。だが見逃すわけにはいかん。」
「何故だっ!?これはもう国家レベルではなく大陸規模の問題なのだぞっ!?」
「ふっ。ならば尚更だ。
何故他国でこのような騒ぎを起こす?その伝承を信じるならば、
今ここで我々人間同士が戦っているわけにはいかぬ事も承知のはずだ。」
「ああ。全てはこの馬鹿のせいで……。」
「……ひょっとして、それって俺か?」
「お前以外に誰がいるっ!」
「ふっ。
貴様らの言わんとする事はよく分かった。
だが、こればかりは譲れぬな。」
「セディと言ったな。お前は一体何を企んでいる?」
「ふっ。貴様らと同じ事を、だ。」
「ならば、どこの国から遣わされた?」
「ふっ。どこの国でもない。流浪の旅人だ。」
「あ、前髪かき上げて格好つけてるー。」
「ほほほほほ。」
「ふっ。
やかましいっ!
……とにかく話合いは無駄なようだな。」
「だがこっちには人質がいるぜ?」