『真実の抹消者(前編)』
「……その本棚は壁に固定されていたはずだが、どうやったんだ?」
「ちょっと掴んだだけよー。倒れちゃったけど。」
「細身の割に、随分と怪力だな。」
「まぁね。着痩せしてるから。」
「そういう問題じゃねぇだろぉぉぉぉっ!」
「あ、生きてた。」
「よう、おかえり。」
「理力を魔導に発展させることなく、
別の方向に作用させて腕力増強させているのは
分かっているんだ!」
「……へぇ、そんなこと可能なんだ。」
「おい、なんで感心してるんだよ。」
「いや、知らなかったから?俺、武術には疎いんだ。」
「お前それでも騎士団長かよ!?」
「あら、アンタ騎士団長様なの?
丁度よかったー☆
聞きたい事があるんだけどさ。ね、ね。」
「この男のスリーサイズなら知らんぞ。」
「初対面でお前に知られてたまるかぁぁぁぁっ!」
「そんな情報知りたくもないわよ。
そうじゃなくて、この地図のコト。
ね、地下の見取り図だけじゃなくて、元の地上部分の地図は?」
「!!!
おい、どうしてその地図の意味を知っている。
それに地上部分があることも……まて。」
「ん?なぁに?」
「探し物が仮にその地図だとしても、
迷わず一直線にここまで来ているな。
誰だ。誰か内通者がいるのか?」
「んっふっふー、さぁねっ。
ま、答えたくないならいいわ。
そっちはまたの機会にするわ。」
「いいや、またの機会はない。ここでお前を捕獲する。
見たところ、この部屋は行き止まりだ。
袋のミミズという言葉があるだろう?」
「……えっと、袋の鼠の事か?」
「そう、それだ。」
「ばーか。」
「馬鹿って言うんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「窮鼠猫を噛むって言葉も知ってる?」
「!」
「!!」
「なんてね、冗談よ。
無暗に意味のない暗殺なんかしないわ。
えっと、話では確かこのあたりのスイッチが……あっ。」
「!?」
「じゃあねーっ。」
「おい、隠し通路!?
なんであんなところにあんなものがあるんだよ!?
なあ、おい、聞いてんのか!?」
「……そうか。あの時、長官はあそこから逃げたのか。」