Forbidden Palace Library #J01 『真実の抹消者(前編)』

『真実の抹消者(前編)』


ブランドブレイ王国 王都
ブランディウム城

ラグランジュ 「……つまり、
 彼女はカイザリア帝国領にて、
 多くの要人暗殺の前科があると。」

アーノルド 「ああ。まぁ殆どの連中は生前から
 何かと恨まれていた輩ばかりだったが、
 それでも法は法だ。捕らえないわけにはいかない。」

ラグランジュ 「ならば外交ルートで手配書を回せばよいだろう。
 ……それができないということは、
 何か事情があるな。」

アーノルド 「!
 べ、べつに事情はないぞ!
 奴がレインエッジを持ち逃げしたなんてことは!」

ラグランジュ 「……レインエッジ?」

アーノルド 「む!どうしてその事を!?」

ラグランジュ 「今お前が言っただろ。」

アーノルド 「ぐぁああああ、しまったぁああああ!
 なんという巧妙な誘導尋問。
 俺ともあろう隠密兵がこうもやすやすと……。」

ラグランジュ 「いや別に誘導尋問も何もしてないんだが。
 それで、レインエッジって何だ?
 カイザリアの建国者、銀狼帝レインの事か?」

アーノルド 「……わかった、腹を括ろう。
 その銀狼帝が有していた二本の透明な剣。
 あの女はその片割れを有している。」

ラグランジュ 「それは元々どこにあったんだ?」

アーノルド 「言えぬ!
 もともと我が家に伝わっていたものが、
 やすやすと盗まれたなどとは言えぬ!」

ラグランジュ 「……そうか。だから隠密兵の名を借りて単独行動しているわけか。」

アーノルド 「ぎくっ! な、何故それを!?」

ラグランジュ 「いやだから、今お前が言っただろ。」

アーノルド 「俺の馬鹿ぁぁぁあああああ!」

ラグランジュ 「伝統の家宝が、という気持ちは分かる。
 しかし、たかが剣の一本だろう。
 主権侵害を犯してまですることか?」

アーノルド 「されど、あれは一本の剣なんだ!」

ラグランジュ 「……わかった、その件については後回しにしよう。
 まず今回、侵入者が盗んでいったのは一枚の地図、
 そして遺留品はこの手描きの見取り図だけか。」

アーノルド 「何が描いてあるんだ、その落とし物には?」

ラグランジュ 「王城への侵入ルートと、地下倉庫までの最短経路のようだな。
 どうみても内部事情を知っている者が、
 情報を与えているとして思えない。」

ラグランジュ 「しかし、なんだかやたらと上手い見取り図だな。
 ……ん?待てよ。
 前にこれとよく似た画風の図面をどこかで……。」


コンコン

ラグランジュ 「ん?」

名も無き騎士 「失礼します、シュレーディンガー家の被害状況が
 まとまりましたので、ご報告に参りました……が、
 後ほどのほうがよろしいでしょうか?」

ラグランジュ 「いや、ここで構わん。言ってくれ。」

名も無き騎士 「はい。
 盗まれた物は、剣の一振り。
 しかしグロリア殿はその詳細について口を濁しております。」

ラグランジュ 「うん、なんでだ?」

名も無き騎士 「わかりません。
 ただ一言、その剣の名称が
 『レインエッジ』と呼ばれる物であることを除いて。」

アーノルド 「!!!」

ラグランジュ 「!?」

アーノルド 「……あの女、これで二本とも手に入れたのかっ!!!」


▽……。



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