『真実の抹消者(前編)』
「どういうことだ。
歩きながらでいい、説明してくれ。
レインエッジとは何なのだ。」
「待て待て、俺にも説明してくれ。
やっと解放されたかと思ったら、
また後を着いて来いって、どこに行くんだよ?」
「すぐそこの知り合いの店だ。
ちょっと心当たりがあるものでな。
それで、レインエッジとは?」
「……我が帝国の建国者たる銀狼帝レインが
生前に愛用した二本の透明な剣。
そのいずれも、帝の死後に行方不明となったとされている。」
「ふむ?」
「しかし実際は、我が祖先ベルナルドと、
その同僚ユージンにそれぞれ内密に預けられた。
秘められた力を悪用される事を防ぐために。」
「その二振りのうち、
ユージンの剣が紆余曲折を経て、
このブランドブレイ王国にたどり着いた。だいぶ昔の話だ。」
「それがグロリアの家にあったというわけか。」
「グロリア?」
「ああ、先日の窃盗被害にあったシュレーディンガー家の令嬢だ。
……令嬢とは言っても、あれから歳月も経っているから
もうそう呼べる歳ではないかもしれんが。いや、黙っておこう。」
「???」
「それで、もう片方はお前の一族が保有し続けていた、と。」
「そうだ。半年前までは。」
「で、かれこれ半年間、
お前はあの女盗賊――暗殺者だったか?と追い駆けっこを
しているわけだ。」
「いや、べ、別に好きで追い駆けっこ……――と、なんで止まるんだ?」
「ここだ。目的地は。」
「『ディラック商店』?
なんか小汚い店だな。
こんな所に何の用事だ?」
「もしも、だ。
賊が俺と同じ情報源を有していて、
次に狙うとしたら、ここのような気がした。」
「見たところどうみても雑貨屋なんだが。」
「扱ってる品が普通じゃないんだ。色々とな。」
「例えば?」
「ふるえるわかめ。」
「は?」
「震えるらしいぞ。食べてみるか?」
「いや、遠慮しとく……って震えるの!?なんで!?」
「あと『3日でわかる禁呪魔導』とか、
胡散臭い本も色々と売りつけられそうになった
記憶もあるな。」
「……いいな、その本。」
「興味があるなら紹介してやるぞ?」
「おーい、マティルダ、いるかー?」
「――……留守にしては不用心だな。」
「へぇ、ふーん、あっそう。
好きでアタイと追いかけっこしてたわけじゃないんだぁ。
ちぇーっ、つまんなーい。」
「ジャンヌ=グリフィス!!!」