Forbidden Palace Library #J01 『真実の抹消者(前編)』

『真実の抹消者(前編)』


ブランドブレイ王国 王都
露店市場

ラグランジュ 「どういうことだ。
 歩きながらでいい、説明してくれ。
 レインエッジとは何なのだ。」

アーノルド 「待て待て、俺にも説明してくれ。
 やっと解放されたかと思ったら、
 また後を着いて来いって、どこに行くんだよ?」

ラグランジュ 「すぐそこの知り合いの店だ。
 ちょっと心当たりがあるものでな。
 それで、レインエッジとは?」

アーノルド 「……我が帝国の建国者たる銀狼帝レインが
 生前に愛用した二本の透明な剣。
 そのいずれも、帝の死後に行方不明となったとされている。」

ラグランジュ 「ふむ?」

アーノルド 「しかし実際は、我が祖先ベルナルドと、
 その同僚ユージンにそれぞれ内密に預けられた。
 秘められた力を悪用される事を防ぐために。」

アーノルド 「その二振りのうち、
 ユージンの剣が紆余曲折を経て、
 このブランドブレイ王国にたどり着いた。だいぶ昔の話だ。」

ラグランジュ 「それがグロリアの家にあったというわけか。」

アーノルド 「グロリア?」

ラグランジュ 「ああ、先日の窃盗被害にあったシュレーディンガー家の令嬢だ。
 ……令嬢とは言っても、あれから歳月も経っているから
 もうそう呼べる歳ではないかもしれんが。いや、黙っておこう。」

アーノルド 「???」

ラグランジュ 「それで、もう片方はお前の一族が保有し続けていた、と。」

アーノルド 「そうだ。半年前までは。」

ラグランジュ 「で、かれこれ半年間、
 お前はあの女盗賊――暗殺者だったか?と追い駆けっこを
 しているわけだ。」

アーノルド 「いや、べ、別に好きで追い駆けっこ……――と、なんで止まるんだ?」

ラグランジュ 「ここだ。目的地は。」

アーノルド 「『ディラック商店』?
 なんか小汚い店だな。
 こんな所に何の用事だ?」

ラグランジュ 「もしも、だ。
 賊が俺と同じ情報源を有していて、
 次に狙うとしたら、ここのような気がした。」

アーノルド 「見たところどうみても雑貨屋なんだが。」

ラグランジュ 「扱ってる品が普通じゃないんだ。色々とな。」

アーノルド 「例えば?」

ラグランジュ 「ふるえるわかめ。」

アーノルド 「は?」

ラグランジュ 「震えるらしいぞ。食べてみるか?」

アーノルド 「いや、遠慮しとく……って震えるの!?なんで!?」

ラグランジュ 「あと『3日でわかる禁呪魔導』とか、
 胡散臭い本も色々と売りつけられそうになった
 記憶もあるな。」

アーノルド 「……いいな、その本。」

ラグランジュ 「興味があるなら紹介してやるぞ?」


からんころん

ラグランジュ 「おーい、マティルダ、いるかー?」


…………。

ラグランジュ 「――……留守にしては不用心だな。」

ジャンヌ 「へぇ、ふーん、あっそう。
 好きでアタイと追いかけっこしてたわけじゃないんだぁ。
 ちぇーっ、つまんなーい。」

アーノルド 「ジャンヌ=グリフィス!!!」


▽……。



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