Forbidden Palace Library #J01 『真実の抹消者(前編)』

『真実の抹消者(前編)』


ブランドブレイ王国 王都
ディラック商店

ラグランジュ 「先手を取られたか。」

アーノルド 「おい、ジャンヌ!何故ここにいる!?」

ジャンヌ 「んっふっふー、理由ならそこの騎士団長さんが
 何か心当たりありそうよ。
 一発でここが分かったみたいだしぃ。」

ラグランジュ 「マティルダはどこへやった。
 傷をつけてはいないだろうな。
 万が一、傷害に及んでいようものなら、容赦はせぬぞ。」

ジャンヌ 「あら、こわいこわい。
 大丈夫よ、ちゃんと留守の間を狙ったから。
 だからあたし無暗に戦ったりはしないんだってば。」

アーノルド 「幾人もの要人を暗殺しつづけた前科があるだろう!」

ジャンヌ 「いい資金源になるのよねー。
 依頼する方も結局ほとんどが要人級だから、
 報酬たんまり入るし。」

ジャンヌ 「でも依頼では滅多に殺したりしないわ。
 せいぜい再起不能にするぐらい。
 支払いケチった依頼主には、容赦しないけどね。」

アーノルド 「! じゃあ今まで暗殺された要人ってのは――!」

ジャンヌ 「そっ、ほとんど元の依頼主。
 報酬の支払いをケチって、返り討ちに遭わせようと
 画策する守銭奴が多い多い。」

アーノルド 「――なるほど、道理でいままで暗殺されたのが、
 悪評の多い輩ばかりだったわけだ。
 その殆どが墓穴を掘っていたわけか。」

ラグランジュ 「ベル、済まないがカイザリアの事情は後にしてくれ。
 ……確か、ジャンヌと言ったな。
 何が目的だ。何の為にここに来た。」

ジャンヌ 「んー、ペンダント型に加工された結晶体を探しに来たんだけど、
 どこにもないのよねぇ。
 真ん中にうっすら紋様の入った、透明なモノって聞いてたんだけど。」

ラグランジュ 「……それが何故ここにあると?」

ジャンヌ 「ん?だって15年前はこのお店にあったって聞いたから。」

ラグランジュ 「15年前?一体誰から聞いた?」

ジャンヌ 「んっふっふー?なーいしょっ。
 でもこれだけ探してもないってことは、
 もうここにはないみたいね。情報も古いし。」

ラグランジュ (ん?ペンダント?)

ジャンヌ 「あ、そうそう。
 騎士団長様、ひとつお願いがあるんだけどー。
 聞いて貰ってもいいかな?」

ラグランジュ 「大人しく事情聴取を受ける準備があるなら、聞くだけは聞こう。」

ジャンヌ 「紫色の髪をしたナルシストっぽい魔導師がいたら、
 『あたしたちは地下にいる』って
 伝えて貰える?」

ラグランジュ 「……!!!」

アーノルド 「ナルシストっぽい魔導師ってどんなだよ?」

ジャンヌ 「んっふっふー、さぁ?
 あたしもまだ会った事無いけど、
 見ればわかるって言ってた。」

アーノルド 「誰が?」

ジャンヌ 「んっふっふー、なーいしょっ。」

ラグランジュ 「――何故知っている。」

ジャンヌ 「え?」

アーノルド 「おう?」

ラグランジュ 「何故、あの男の存在を知っている?」

ジャンヌ 「ふぅーん、てことはあなたも知ってるのね。
 結構意外。
 なら話は早いわ、そういうこと。」

アーノルド 「どういうことだよ、俺にはちっともわからん。」

ジャンヌ 「あたしはね、『真実』を抹消に来たのよ。」

ラグランジュ 「真実、だと?どういうことだ、説明してもらおう。」

ジャンヌ 「んっふっふー、おしゃべりはここまで。
 引き留めてその間に援軍待とうったって無駄よ。
 時間切れでしったー。」

ラグランジュ 「だが、壁を背にしている時点で逃げ道はないぞ。」

ジャンヌ 「んー、じゃあ作ればいいんじゃない?
 せーの……っ!
 蹴りぃぃっ!!!」


ばきぃぃぃっ

アーノルド 「!?」

ジャンヌ 「あ、でっかく穴開け過ぎちゃった。
 まぁ通りやすくなったし?
 んじゃっねー。」


ひょいっ

たったったっ

ラグランジュ 「…………。」

アーノルド 「おい、待てっ!」

ラグランジュ 「……どうやったら木組みと漆喰の壁に、
 蹴りの一撃でこれだけの大穴が
 空くんだ?」


▽……。



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