Forbidden Palace Library #J01 『真実の抹消者(前編)』

『真実の抹消者(前編)』


ブランドブレイ王国 王都
中心街


――30分後。

アーノルド 「おい、ここで待ってろって言ったきり姿を眩まして、
 一体どこに行ってたんだ?
 随分と時間掛かったな。」

ラグランジュ 「援軍を要請した。」

アーノルド 「援軍? おいおい、騎士団長なんだろ?
 だったら自分の部下を使えばいいだろ。
 なんでわざわざ余所の騎士団に……。」

ラグランジュ 「俺の指揮下にある5月騎士団は、
 シスターズ市に駐留中だ。
 王都にいるのは事務官ばかりで、実働部隊はここにいない。」

アーノルド 「必要な時に部下のいない騎士団長とは、随分ご立派な身分で。」

ラグランジュ 「残念ながら、その皮肉に反論できるだけの事実を持たない。
 それ故に、2月騎士団に応援を要請してきた。
 コペルニクス騎士団長に直々に。」

アーノルド 「そのコペル――ニクスとかいう騎士団長は信頼できるのか?」

ラグランジュ 「……人間性には些か難はあるが、力にはなってくれるかもしれない。」

アーノルド 「なんとも不安な答えをありがとよ。」

ラグランジュ 「俺の他に唯一、騎士団で事情を知ってる人間なんだ。」

アーノルド 「事情?」

ラグランジュ 「昔、色々あってな。」

ジャンヌ 「ふぅーん。紫色の髪のナルシスト男に追い回された、とか?」

ラグランジュ 「追い回された訳ではないが、まぁ似たような――ちょっと待て。」

ジャンヌ 「ん?」

ラグランジュ 「いつからそこにいた。」

アーノルド 「あっ、ジャンヌっ!!!」

ジャンヌ 「気付くの遅いわよ、アンタ。」

ラグランジュ 「どこから話を聞いていた。」

ジャンヌ 「シスターズ市がどうのって辺りから?
 それより、なんかゴツイ鎧の人達がうろうろしてたけど、
 警備でも厳しくしたの?」

ラグランジュ 「……その警備網の中でお前を見つけたのが、
 俺たちが一番最初という時点で
 騎士団の存在意義が疑われるな。」

ジャンヌ 「別に最初から騎士団と戦うつもりはないから、安心してネ☆」

ラグランジュ 「だったら素直にお縄を頂戴しろ!」

ジャンヌ 「カイザリアの下っ端が相手なら話は別よ。
 ま、アタイ達の母体はもっと上位組織だから、
 首脳部以外知らないのも無理はないんだけどねー。」

ラグランジュ 「……あたい『達』?上位組織?
 つまり単独行動ではなく、
 他に誰かがいるということか。」

ジャンヌ 「いっけなーい。口滑っちゃった。」

ラグランジュ 「一体、他に誰がいるんだ。」

ジャンヌ 「んー。そうねー、例えば生きてる中では――師匠とか?」

アーノルド 「師匠?」

ジャンヌ 「師匠はね、孤児だったアタイと妹を引き取って育ててくれたの。
 ……妹のロザリアは生まれつき身体が弱くて、
 アタイみたいな修行できなかったけけどね。」

アーノルド 「その果てが暗殺者か。」

ジャンヌ 「これはアタイの恩返しよ。
 師匠には現在生まれてくるずっと前から、
 下されていた命令があったんだって。」

ラグランジュ 「生まれてくる前?……訳の分からない話だな。」

ジャンヌ 「んっふっふー、お喋りしすぎちゃったかな?
 包囲される前に早いとこ向かわなきゃっ。
 んじゃねっ!」


たたたたたたっ

アーノルド 「おい、待てっ!!!」

ラグランジュ 「運河の方に逃げた、追うぞ!」

アーノルド 「おう!」


▽……。



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