『真実の抹消者(前編)』
「……おかしいな、姿が消えたぞ。」
「橋の上にも捜索網は敷かれているはずだ。
誰の目にも付かず渡るというのは考えにくい。
とすれば、この付近に隠れている可能性もある。」
「運河を泳いで……なんてのは流石にリスクが高いか。」
「……ん?運河?」
「どうしたんだ?険しい顔して。」
「――まさか。」
「?」
「あ、おい、どこに行くんだ!?」
「おいってば!」
「橋の袂だ!すぐそこの!」
「階段降りるの早いな、おい。」
「……!やっぱりこの場所だ!」
「うわわっ。
おいおい。この土台、穴が開いてるぞ。
工事の担当者を呼んだ方がいいんじゃないのか?」
「……恐らくこの中に潜ったんだ。
何もかも、あの時と同じだ。
15年前のあの日と!」
「へ?」