『真実の抹消者(前編)』
「……だが、だめか。
エネルギー変換器が故障しているな。
不完全な形でしかアルキメデス動力炉が稼働していない。」
「師匠ーっ。
言われたモノ集めてきたよ!
でも、結晶体のペンダントはここにはないみたい。」
「そうか。あれは既に人手に渡った後だったか。ご苦労。」
「何、ここ。地下シェルター?」
「大陸で唯一、稼働状態で維持されているアルキメデス動力炉だ。」
「それ故に、ブランドブレイの王都はこんな辺鄙な土地に建てられた。
……これと同類の遺構はカイザリアの帝都の地下にもあってね。
レイン皇帝陛下の即位後に、封印されてしまったが。」
「ふぅーん。でも不思議な感じ。
なんだから身体が高揚するみたいな、
ふわーっと浮きそうって言うか。」
「アルキメデス動力炉の影響で、
ここには地上よりも多くの魔力が集まっているんだ。
高揚感はその証だ。」
「この力場は、我々にとって力となる。
そのために歳月を掛けて調べ尽くし、決戦の地としたのだ。」
それで、地図は取ってきたか?」
「はい、これでしょ?」
「ご苦労。どれどれ。
……なるほど、ここの回路を繋げばリンクするわけか。
だが、こっちの結線はやはり損傷しているようだな……。」
「師匠、さっきから何やってんの?」
「我々の力を最大限発揮するための舞台調整だ。
予想以上に損傷が出ている――万全ではないが、
現状で決戦を迎えるしかなさそうだ。」
「なんだ……この空間は!?」
「んっふっふー、やっと追いついたのね。遅かったじゃない。」
「ジャンヌ=グリフィス!!!」
「なるほど。彼がお前を追っていたという、
噂のカイザリアの隠密兵か。
なかなか美男子ではないか。」
「や、やだっ。師匠なに言ってるんですかっもうっ!アタイは別に――。」
「ほう。懐かしい顔も一人いるな。」
「……まさかここで、貴方にお会いするとは。」
「私もだ。思っても見なかったよ。」
「ステヴィン長官っ!」
「久しいな、ラグランジュ君。
懐かしすぎてお祝いの言葉すら忘れていた。
騎士団長に昇格したそうだね、おめでとう。」
「――第十三の機構が解体されてから、一体どこにおられたのです。」
「はっはっは、馬鹿な事を言わないでくれ。
第十三の機構は別に解体などされていない。
君を含めてメンバーを全員入れ替えただけだ。」
「ステヴィン長官。貴方は一体……。
いや、貴方だけではない!
お前達は、何者なんだ!」
「曲者よ。」
「自称すんな。」
「そのぐらい見りゃわかるわぁぁぁぁあああ!」