『真実の抹消者(前編)』
「えーと、もう一つの組織名としては、
アルゲンタイン帝国、第十三特殊部隊
――ということになるんだっけ?」
「もはや部隊と呼べるだけの人員も残っていないがな。」
「アルゲンタイン帝国!?
おいおい、ちょっと待てよ。何寝ぼけた事言ってんだ!?
そんな国はとっくに滅び、今はカイザリア帝国として……。」
「寝ぼけているのはお前だ、カイザリアの隠密兵。
お前も本来はわたしたちの指揮下に入るべき存在なのだ。
ベルナルドの子孫であるならば尚のこと。」
「!?」
「超法規的措置により、
たった一つの部隊だけが旧名を引き継いだ。
どこにも属さない部隊として、作戦行動を可能とするために。」
「真実という名を冠した、作られた歴史を終わらせる。
それこそが第十三特殊部隊に与えられた至上命令。
450年の昔より引き継がれてきた唯一の目的。」
「その命令を下したのは一体誰だ?」
「――レイン=バベッジ。」
「銀狼帝!?
アルゲンタイン帝国を打ち倒し、
カイザリア帝国を建国した初代皇帝が!?」
「レイン皇帝陛下は既にこの世にいない。
だが、その打倒エルネストという遺志は引き継がれた。
それが我々、第十三特殊部隊。」
「ちょっと待ってくれ。
だけどアルゲンタインは既に亡国だ。
その活動資金は一体どこから――。」
「……なるほど、その資金繰りのために
暗殺家業を繰り返してきたか。
同時にそれは実戦の練習にもなるわけだ。」
「許しを請おうなどとは思ってもいない。
犠牲の為に殉じろなどと言うつもりもない。
正義のためと言い訳をするつもりもない。」
「全ては――真実の名を冠した、宰相エルネスト抹消のため。」
「ほう、面白い。」
「!?」
「埋めたはずの坑道を、またも掘り返す者がいるとは。」
「……ふっ。
また厄介な連中が現れたと思い来てみれば、15年前の貴様か。
しかし今回は随分と人数が多いな。」
「――お出ましか、エルネスト。時は満ちた。」