『真実の抹消者(前編)』
「ヴェクターの時代に生み出された我らの脚部格闘術は、
理力を最大限利用する。
故、魔力に満ちたこの場所でこそ最大の真価を発揮する。」
「ふっ。
この場では貴様のみならず私の魔導も
増幅するという事を失念していたようだな。」
「それも計算済みだ。
例え威力が増幅しても、詠唱速度が早まるわけではない。
発動させなければ問題はない。はっ!」
「ぐっ! セレン・クエラ・ハル――」
「やっ!たっ!」
「くっ、方程式が崩されたか。
ならばもう一度、
セレン・クエラ・ハル――」
「つぁっ!」
「蹴りぃぃぃぃっ!」
「ぐはぁっ!
……おのれ、この私に、
魔導を詠唱させぬつもりか!」
「第十三中隊の名は伊達ではない。
テクノクラートを有した国家機構である以上、
組織的な戦略構築が行われてきた。」
「その中で出た結論が、
両腕両脚すなわち四肢を用いた魔導詠唱の阻止。
これは同時に理力介入を行うことで、構築中の方程式を崩すこともできる。」
「手を封ずれば、魔導師など赤子も同然!
例え宰相エルネストとてその例外ではない!
つぁっ!」
「ぐぁあっ!?」
「倒れた!今だ、覆い被さるぞ!」
「はいっ!」
「ぐ……あっ……!?」
「喉を掴んだぞ、エルネスト。
お前の命もここまでだ!
歴史から消えろ――っ!」
「ぐぁっ……お……のれ……っ。
…ゼグリナ……ヴィ……
メルリオス……。」
「ジャンヌ、もっと締め付けろ!」
「はい!」
「ぎ……が……ぁあああああっ!」
「あとはお前の息の根を止めれば、全て終わる――!」
「重力よ……傾斜し…奴を……運べ!」
「――しまった!その魔導は!」
「ティルトグラヴィティ!」
「きゃあっ!?」
「――うわぁぁああああっ!」