『真実の抹消者(前編)』
「うぉっ!?」
「何だ、いま何が起きた!?
エルネストの周囲だけ重力が反転して――。
それで、そのまま二人とも突き飛ばされて……。」
「一瞬、天井が地面になって、
地面が天井に……うあっ!?
なんだ、天井に穴が開いてるぞ!?」
「……おのれ、よくもこの私に触れおったな……!」
「エディソンとジャンヌが……まさかあの穴の向こうに!?」
「いや、俺が目視した限りでは、
空間ごと切り取られるように飛んでいったのは
片方だけだった――たぶん、エディソンが。」
「じゃあ、ジャンヌは!?」
「ふっ。柱の下で蹲っている、あの塊の事か?」
「……くぁっ……。」
「ジャンヌ!!!」
「もっともこれほどの至近距離では、
どの方向に重力が飛ぶか、予想しかねる部分もあったが。
いや、至近距離だからこそ出来た技と言うべきか。」
「はぁ……はぁっ……。」
「ジャンヌ、しっかりしろ!」
「高重力で壁面に叩きつけられたのだ。
骨格に相当なダメージを喰らっているはずだ。
生きているだけでも運が良い。」
「例えどれだけ療養したところで、再び刃向かえるまでには回復するまい。
いや、回復などさせぬ。
ここで潰え――。」
「何の音だ!?」
「天井に開いた穴から崩落が!地下全体が崩れだしたぞ!」
「……止めを刺している時間はない、か。
しかし、二度と動けなくしておかねばなるまい。
残りの僅かな余生を、絶望の内に生きるがよい。」
「やめろ!やめてくれ!」
「シェヴィ・リ・ティエルス
闇よ刃となりて降り注げ!
シャドゥブレイド!!!」
「きゃあああああぁぁぁっ!」
「やめろぉおおおおおおおおっ!!!」