Forbidden Palace Library #J01 『真実の抹消者(前編)』

『真実の抹消者(前編)』


ブランドブレイ王国 王都
地下遺構

アーノルド 「てめぇっ!なんてことを……!」

ラグランジュ 「やめておけ。勝ち目はないぞ。」

アーノルド 「ラグランジュ!」

エルネスト 「ふっ。もう一人の男の方は、あの天井の穴から吹き飛んだか。
 よもや生きてはいないと思うが……念のためだ。
 ラグランジュ、後は任せた。私は奴を追う。」


だだだだだっ

ラグランジュ 「…………。」


ガラガラガラ――。

アーノルド 「入ってきた通路が崩れた!?
 ……袋の鼠に嵌ったのは、
 どうやら俺たちだったようだな。」

ラグランジュ 「…………。」

ジャンヌ 「アーノルド……。」

アーノルド 「ああ。大丈夫だ。俺が守る。」


ぎゅっ

ラグランジュ 「…………。」


コツ コツ コツ

すっ。

アーノルド 「――何故だ、何故手を差し伸べる!」

ラグランジュ 「……俺には、これ以上君たちと戦う理由はない。」

ジャンヌ 「!!!」

アーノルド 「!?」

ラグランジュ 「私が追っているのは、ステヴィン長官――
 いや、ジェイムス=エディソンただひとり。
 彼の行方が不明な以上、また捜索が私の任務だ。」

ラグランジュ 「そこのジャンヌという女には、
 シュレーディンガー家をはじめとする
 いくつかの窃盗の容疑が掛けられていたが――。」

ラグランジュ 「そっちは宰相命令ではない。だから、忘れることにした。
 それに、あの男は『後は任せる』と言っただけだ。
 伝達が曖昧な以上は、どうしようと俺の勝手だ。」

アーノルド 「ラグランジュ、お前……。」

ラグランジュ 「ベル。その女を抱えられるか。」

アーノルド 「え? お、おう?」

ラグランジュ 「よし、崩れる前に逃げるぞ。」

アーノルド 「!?」

ジャンヌ 「え?だけど、出口は……。」

ラグランジュ 「入ってきたのとは反対側に、もうひとつ通路がある。
 昔と変わっていなければ、そのまま城址跡公園に
 繋がっているはずだ。」

ジャンヌ 「どうして……。」

ラグランジュ 「言っただろう、エディソンがこの場にいない以上、
 もう君と戦う理由はない。
 俺は騎士団員として、使命を全うしただけだ。」

ジャンヌ 「でも、アタイは……。」

ラグランジュ 「――君は、この国で誰も殺していない。」

ジャンヌ 「!!!」

ラグランジュ 「俺はブランドブレイの騎士団員だ。
 法にない限りは他国での出来事には関与しないし、する権限もない。
 それだけだ。」

アーノルド 「……恩に着るぞ、ラグランジュ。」


ガラガラガラ――。

ラグランジュ 「崩壊は近い――行くぞ、生きるために。」

アーノルド 「ああ。」


▽……。



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