Forbidden Palace Library #J01 『真実の抹消者(前編)』

『真実の抹消者(前編)』


ブランドブレイ王国 王都
城趾跡公園

アーノルド 「ジャンヌ、大丈夫か!?」

ジャンヌ 「大丈夫じゃないけど……大丈夫……。」


がらがらがらっ

アーノルド 「……何もかも崩れ去ったな。」

ラグランジュ 「ベル、急げ。
 あの男の考えが変わって、戻ってくる可能性もある。
 そうしたら、その女の命はなくなる。」

アーノルド 「あ、ああ。だけど、どうすれば……。」


たったったっ。

クラウディオ 「心配したぞ、ラグランジュ。一体何が――。」

ラグランジュ 「コペルニクス騎士団長。
 一つ頼みがある。
 馬車を一台手配してくれないか。大至急だ。」

クラウディオ 「……どういうことだ。」

ラグランジュ 「あの男が、絡んでるんだ。」

クラウディオ 「……分かった。これ以上は聞かぬ。」

ラグランジュ 「聞いたとおりだ、ベル。
 馬車に乗って逃げろ。
 この国から離れた遠い場所まで。」

ジャンヌ 「騎士団長様……。」

ラグランジュ 「お前達に、俺と同じ思いをして欲しくはなかったんだ。
 ……それまで隣にいた人間を、
 人質に取られる事ほど辛い思いはない。」

アーノルド 「……ラグランジュ。」

ラグランジュ 「例えあの男がいても――守護こそが騎士団の本懐。
 それでも俺は、騎士なんだ。
 誰かを守る為の騎士だから。」

アーノルド 「君は君の道を選んだ、
 俺は俺の道を選んだ。
 そう言ったのはお前だろ?」

ラグランジュ 「そうだったな。」


パカランっ パカランっ

クラウディオ 「……馬車が着いたぞ。」

アーノルド 「乗れるか、ジャンヌ?」

ジャンヌ 「ん……ごめん、全然力が入らないの……。」

アーノルド 「わかった。よっこいせ……!」

ジャンヌ 「きゃっ!
 ち、ちょっと、お姫さま抱っこって何よ!?
 恥ずかしいじゃないっ!」

アーノルド 「いてっ!いたいってば!ひっかくなっ!」

ラグランジュ 「そんだけ口聞ければひとまず大丈夫だな。」

ジャンヌ 「……騎士団長様、ありがとう。」

アーノルド 「ラグランジュ、俺からも礼を言わせてくれ。ありがとう。」

ラグランジュ 「……もしかするとあの男が、
 そのうち追ってくるかもしれない、気を付けろ。
 未来に足跡を残すな。それだけが生き延びる唯一の道だ。」

アーノルド 「ああ。分かった。」


▽……。



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