Forbidden Palace Library #J01 『真実の抹消者(前編)』

『真実の抹消者(前編)』


ブランドブレイ王国 東域
エンハンブレ街道

ジャンヌ 「……ねぇ。」

アーノルド 「ん?」

ジャンヌ 「この馬車、どこに向かっているの……。」

アーノルド 「帝都カイザリアだ。」

ジャンヌ 「……最後の最後に、アタイ捕まっちゃったね。」

アーノルド 「…………。」


ヒヒーンっ

ジャンヌ 「……?
 ねぇ、今、方向転換しなかった?
 どこに向かってるの?」

アーノルド 「帝都行きはやめて、アンダルシア市を目指す。
 俺の知り合いがいる。
 そこでひっそりと暮らすんだ。」

ジャンヌ 「……嫌。」

アーノルド 「え。何が?」

ジャンヌ 「アンタがいないのは、嫌。」

アーノルド 「なっ……えっ、あぅあ?」


ずるっ

アーノルド 「危なっ、ス、スマン。」

ジャンヌ 「ううん。
 ……離れたくない。
 アンタの側にいたいんだ。」

アーノルド 「……なぁ、これは独り言なんだが。」

ジャンヌ 「うん?」

アーノルド 「……俺、最初は盗まれた家宝のレインエッジを
 取り戻す為にお前を追いはじめた。
 だけど、長い長い追跡劇の途中で気付いたんだ。」

アーノルド 「本当はもう家宝なんか、どうでもよかった。
 会うたびにレインエッジよりも、
 お前の瞳に目を奪われていたから。」

ジャンヌ 「んっふっふ……あはっ、あはははっ。」

アーノルド 「な、なんだよ!
 そんなに可笑しいかよっ!
 だから独り言って言っただろう!」

ジャンヌ 「んふふ。そういう言い訳するところもおかしい。」

アーノルド 「……やっぱ言うんじゃなかった。」

ジャンヌ 「あはは。だって、アタイもそうだもん。
 アンタに捕まったのは、身体も心も。
 本当は、ずっとこうしたかったの。」

アーノルド 「え…………。」


▽……。



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