『真実の抹消者(後編)』
「――それで、そろそろ正直に吐いたらどうだ。」
「いや、だから俺は何もしていないってば!」
「ならばなにゆえ、ブランドブレイの騎士団長殿が
我らがシルバニア王国に居るのだ。
外交ルートではそのような話は届いていない。」
「だ・か・ら、説明しただろ!
正規の手続きを踏もうとする前に、
あの男が国境線を越えたから、やむを得ず――。」
「国境線からこの首都までは随分と距離がある。
その途中からでも連絡なり手続きなりを
寄越す事もできたのではないかね?」
「仕方ないだろ。ほぼ不眠不休でここまで追ってたんだから!」
「いまいち説得力がないな。」
「……何で今回は俺がカツ丼側になってるんだ。」
「本題に入ろう。
いつ、どのようなルートでこの首都に入った。
詳しく説明してもらおう。」
「ホワイトテイル市を発った後、
ロンドンデイル市を経由してそのままシルバニアへ。
さっきも説明した通りだ。」
「副将軍、第5師団から伝令です。
3日前、ブランドブレイの騎士団長殿が
単身でロンドンデイル市を駆け抜けていったとの情報が届きました。」
「ほら、言っただろう?」
「……ふむ。
アリバイは出来たということか。
あと一歩だったというに。」
「何があと一歩なんだよ。」
「では本当に、
西回りでこのシルバニアの王都へ来られたのであって、
バレンタイン港は寄っていないのだな?」
「寄ってない。断じて。」
「……ふむ。捜査は振り出しに戻ったか。」
「どういうことだ?バレンタインで何かあったのか?」
「……どこから説明したものか。
とりあえずお茶でも飲むかね。
ああ、残念だがお茶請けのミルククッキーは出せないぞ。」
「なんでミルククッキー限定なんだよ。」
「俺の趣味だ。」
「…………。」