『真実の抹消者(後編)』
(!!! 住宅の玄関口に誰かが倒れてる!)
「おい、しっかりしろ!」
「不覚を取った……っ。」
「大丈夫か!?」
(……流血が酷い。
応急処置では間に合いそうにない、早く医者を呼ばないと!)
「娘が……。」
「娘?」
「わたしの娘が……さらわれた……。」
「さらわれた?誘拐ということか?」
「犯人はジェイムスと名乗り……ごふっ――ごはぁっ!」
「おい、大丈夫か!?
――王立軍!誰か、近くにいないのか!
重傷者だ!早く医者を!」
「たの……む……。」
「ああ、いま大至急医者を呼んで――。」
「頼む……娘を、ユリアを……取り戻して……。」
「!!!」
「おい! しっかりしろ! おいっ!」
「何事かね!」
「……シルバニア王立軍か。
悲鳴が聞こえたので駆けつけたら、
この男が倒れてて、娘がどうのと――。」
「アウグスト君!」
「ダメだ、もう事切れている。」
「……知り合いだったのか?」
「同僚であり親友の息子だ。
いや、王立軍の人事を知らぬ隣国人には、
副将軍の息子と言った方が早いかもしれないな。」
「――お前は?」
「レオン。レオン=セルシウス、王立軍師団長だ。」