『真実の抹消者(後編)』
「何!? 息子が、アウグストが殺された……!?」
「たったいま入った確かな情報だ。
ラントシュタイナーの時と同じ殺され方だ。
……そして残念な知らせがもう一つある。」
「まだ何かあるのか!?」
「アウグストの娘、ユリアが誘拐された。」
「ま、孫のユリアが!?
……何故だ、何故こんなことに。
ラントシュタイナーだけでなく、ワシの息子と孫まで!」
「これは国家の緊急事態だ。
全軍を以て厳戒態勢へと移行する。
何があっても魔導原本を奴の手に渡すな。」
「お言葉ですが将軍閣下――。」
「言っておくが、例え人質がお前の孫であろうと、
犯人の要求には屈せぬぞ。
その上で何か質問があるのであれば聞こう。」
「……第一から第五まで全師団、
現在配備済みです。
これ以上の厳戒態勢をどのように構築なさるおつもりで。」
「手が足りなければ、作ればいい。
戦略実験中の試験連隊を、
たった今より第六師団に昇格させる。」
「!? ウェルナー将軍!あの試験連隊は戦力未知数です。
人数はもとより、練度も王立軍師団に及びませぬ!
かえって足手まといになる可能性すらあります!」
「確かに、正式な師団としては人数も経験も足りない。
だが代わりに、敵も予想すらつかぬ
奇想天外な兵法を有しているだろう。」
「しかし、王立軍を立てる時ですら、
国外から反感があったと聞き及んでいます。
それなのに緊急事態だからといって――。」
「オランジュラウン王の承認も得ず
もう一つ師団を増やすなどとなると、
内外双方に敵を作りかねません!」
「それをどうにかするのがお前の仕事だ、ボイス。
――確かお前のところの幼い孫が……ユリウスだったか、
レミィティアーナ王女の友達役を務めていただろう。」
「…………!」
「そうだ、言わんとしていることは分かったようだな。
使えるコネクションは全て使え。
それが例え身内でもだ。」
「しかし、国外は……特に旧宗主国のブランドブレイに対し、
事前になんら打診がないとなると、
またいつぞやのセンティス事件の二の舞に――。」
「ブランドブレイ?
さっきの騎士団長がまだこの都にいるだろう。
黙認でいい、承諾を取れ。そうすれば筋は通る。」
「……しかし!」
「返事はどうした、ボイス。」
「……了解致しました、将軍。」
「マックスウェル連隊長に師団長権限を!
初代第6師団長として、
その実力を遺憾なく発揮せよと伝えろ!」