Forbidden Palace Library #J02 『真実の抹消者(後編)』

『真実の抹消者(後編)』


シルバニア王国 王都
繁華街展望台

ボイス 「何!? 息子が、アウグストが殺された……!?」

ウェルナー 「たったいま入った確かな情報だ。
 ラントシュタイナーの時と同じ殺され方だ。
 ……そして残念な知らせがもう一つある。」

ボイス 「まだ何かあるのか!?」

ウェルナー 「アウグストの娘、ユリアが誘拐された。」

ボイス 「ま、孫のユリアが!?
 ……何故だ、何故こんなことに。
 ラントシュタイナーだけでなく、ワシの息子と孫まで!」

ウェルナー 「これは国家の緊急事態だ。
 全軍を以て厳戒態勢へと移行する。
 何があっても魔導原本を奴の手に渡すな。」

ボイス 「お言葉ですが将軍閣下――。」

ウェルナー 「言っておくが、例え人質がお前の孫であろうと、
 犯人の要求には屈せぬぞ。
 その上で何か質問があるのであれば聞こう。」

ボイス 「……第一から第五まで全師団、
 現在配備済みです。
 これ以上の厳戒態勢をどのように構築なさるおつもりで。」

ウェルナー 「手が足りなければ、作ればいい。
 戦略実験中の試験連隊を、
 たった今より第六師団に昇格させる。」

ボイス 「!? ウェルナー将軍!あの試験連隊は戦力未知数です。
 人数はもとより、練度も王立軍師団に及びませぬ!
 かえって足手まといになる可能性すらあります!」

ウェルナー 「確かに、正式な師団としては人数も経験も足りない。
 だが代わりに、敵も予想すらつかぬ
 奇想天外な兵法を有しているだろう。」

ボイス 「しかし、王立軍を立てる時ですら、
 国外から反感があったと聞き及んでいます。
 それなのに緊急事態だからといって――。」

ボイス 「オランジュラウン王の承認も得ず
 もう一つ師団を増やすなどとなると、
 内外双方に敵を作りかねません!」

ウェルナー 「それをどうにかするのがお前の仕事だ、ボイス。
 ――確かお前のところの幼い孫が……ユリウスだったか、
 レミィティアーナ王女の友達役を務めていただろう。」

ボイス 「…………!」

ウェルナー 「そうだ、言わんとしていることは分かったようだな。
 使えるコネクションは全て使え。
 それが例え身内でもだ。」

ボイス 「しかし、国外は……特に旧宗主国のブランドブレイに対し、
 事前になんら打診がないとなると、
 またいつぞやのセンティス事件の二の舞に――。」

ウェルナー 「ブランドブレイ?
 さっきの騎士団長がまだこの都にいるだろう。
 黙認でいい、承諾を取れ。そうすれば筋は通る。」

ボイス 「……しかし!」

ウェルナー 「返事はどうした、ボイス。」

ボイス 「……了解致しました、将軍。」

ウェルナー 「マックスウェル連隊長に師団長権限を!
 初代第6師団長として、
 その実力を遺憾なく発揮せよと伝えろ!」


▽……。



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