Forbidden Palace Library #J02 『真実の抹消者(後編)』

『真実の抹消者(後編)』


シルバニア王国 王都
住宅街 ハーシェル邸玄関先

レオン 「――なるほど。
 それで結局、
 犯人の姿は見ていないのか?」

ラグランジュ 「ああ。俺がここに着いた時には既に倒れていた。」

レオン 「ユリウス君は――ああ、そうか、
 今日はお城にお呼ばれの日で留守中か。
 他に目撃者は?」

ラグランジュ 「いない。
 ……ってちょっとまて。
 この状況だと俺がまた重要参考人か!?」

レオン 「と言いたいところだが、
 確かにここにユリアちゃんがここにいない以上、
 その話を信じるしかないだろう。」

レオン 「それに、アウグスト君の死体には外傷がない。
 けれども骨格は奇妙な曲がり方をしている。
 この事からも、死因が剣によるものでないことは明かだ。」

ラグランジュ 「……酷い有様だな。まるで折り紙のような畳まれ方だ。」

レオン 「石畳までもが歪み、罅(ひび)が入ってることを考えると、
 恐らく重力魔導による圧死だろう。
 とすれば、相当の名うてという事になるな……。」

ラグランジュ 「重力魔導?」

レオン 「魔導の中で、最も難しいとされる分野だ。
 高等学校でも概念以上の事を教えることはない。
 いや、教えられる人間がそもそも殆どいないのだ。」

レオン 「禁呪ではないが、行使可能者が皆無に近い魔導系統。
 それが重力魔導だ。
 やっこさんは、そいつを難無く行使している。」

ラグランジュ 「…………。」

レオン 「誰か心当たりがあるのか?」

ラグランジュ 「……ない、と言えば嘘になる。
 だが、ここでは言えない。
 ひとまずボイスの所に行きたいのだが――。」

レオン 「分かった。実況見分は部下に任せて、私も一緒に戻ろう。」


▽……。



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