『真実の抹消者(後編)』
「――なるほど。
それで結局、
犯人の姿は見ていないのか?」
「ああ。俺がここに着いた時には既に倒れていた。」
「ユリウス君は――ああ、そうか、
今日はお城にお呼ばれの日で留守中か。
他に目撃者は?」
「いない。
……ってちょっとまて。
この状況だと俺がまた重要参考人か!?」
「と言いたいところだが、
確かにここにユリアちゃんがここにいない以上、
その話を信じるしかないだろう。」
「それに、アウグスト君の死体には外傷がない。
けれども骨格は奇妙な曲がり方をしている。
この事からも、死因が剣によるものでないことは明かだ。」
「……酷い有様だな。まるで折り紙のような畳まれ方だ。」
「石畳までもが歪み、罅(ひび)が入ってることを考えると、
恐らく重力魔導による圧死だろう。
とすれば、相当の名うてという事になるな……。」
「重力魔導?」
「魔導の中で、最も難しいとされる分野だ。
高等学校でも概念以上の事を教えることはない。
いや、教えられる人間がそもそも殆どいないのだ。」
「禁呪ではないが、行使可能者が皆無に近い魔導系統。
それが重力魔導だ。
やっこさんは、そいつを難無く行使している。」
「…………。」
「誰か心当たりがあるのか?」
「……ない、と言えば嘘になる。
だが、ここでは言えない。
ひとまずボイスの所に行きたいのだが――。」
「分かった。実況見分は部下に任せて、私も一緒に戻ろう。」