Forbidden Palace Library #J02 『真実の抹消者(後編)』

『真実の抹消者(後編)』


シルバニア王国 王都
繁華街展望台

ボイス 「アウグストが殺され、
 ユリアは行方不明。
 厄介な事になってしまった……。」

ウェルナー 「――もっと厄介なのは、
 犯人の知っている魔導原本の情報が、
 果たしてどちらの情報か、分からぬ事だ。」

ボイス 「どちらの情報?」

ウェルナー 「今現在この国にある魔導原本は、一枚ではない。
 犯人の狙いが二枚のうちいずれか、
 あるいは双方か分からぬ以上、両方を守るしかない。」

ボイス 「……どういうことですか、ウェルナー将軍。」

ウェルナー 「戻ってきた一枚は再び王立文庫の隠し部屋に収められたが、
 それとは別にもう一枚がこの国には眠っている。
 文庫とは異なる場所の隠し部屋に。」

ボイス 「――その具体的な場所を、ご存じなのですか。」

ウェルナー 「在処は公爵家の人間のみが知っている。
 だが、そこに至るまでの手順は、代々の将軍しか知らぬ。
 両方が揃って初めて、鍵となるのだ。」

ボイス 「そのために、我が息子は殺され、このまま孫娘をも見殺しにしろと。」

ウェルナー 「無論。どのような圧力にも屈する訳にはいかぬのだ。」

ボイス 「……ウェルナー将軍。
 王立軍の目的が何であるか、
 今一度お訊ねしたい。」

ウェルナー 「む?
 いきなりどうしたというのだね?
 哲学問答なら後でじっくり聞いてやる。今は――」

ボイス 「将軍のみぞ知るその鍵こそが、
 いまこの国に危機を及ぼしている事はお分かりか。
 伝説と人命の、いずれが大事か。」

ウェルナー 「ボイス。君は事の重大さを理解していない。
 魔導原本は伝説であるが故に、
 世界を狂わす存在でもあるのだ。」


▽……。



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