『真実の抹消者(後編)』
「誰だっ!?」
「ふっ。貴様に名乗る名などない。」
「ここはどこなのっ、見えないよっ、怖いよっ!」
「ユリア!!!」
「え……おじいちゃんの声!?
おじいちゃんそこにいるの!?
助けて、おじいちゃんっ!」
「生憎、将軍の血族がこの都には不在でな。
副将軍である貴様の血族を狙ったのだが、どうにもうるさくて適わん。
……目隠しだけでなく、猿ぐつわも用意すべきであったな。」
「きゃーっ、いやーっ!」
「ええい、少しは大人しくせんかっ!」
「びくっ。」
「……それで、要求は何だ。」
「王城の隠し部屋の場所を教えよ。
そこに魔導原本があるはずだ。
アシスト家のウィリアムの隠した一枚が。」
「ワシは知らぬ。
知っていたのは生前のウェルナー将軍のみ。
既に情報は失われた。」
「……ふっ。相伝する前に死んだか。
仕方あるまい、別の方法を取ろう。
ならば、マスターキーを渡せ。」
「マスターキー?」
「そうだ、王城の見取り図が極小で刻まれた
小さな透明の結晶体だ。
恐らくペンダント状に加工されているものだ。」
「そんなものは知らん。」
「知らぬなら公爵に聞いてこい。」
「……オランジュラウン公は、一度寝たら起きないお方だ。」
「ふっ、ならば叩き起こせ。
貴様の孫娘の命が大事ならば、な。
こちらには人質がいることを忘れるな。」
「ぐっ……!」
「これは脅しではない。
その証拠に、貴様の息子――つまりこの小娘の親の命は
もうこの世にない。」
「……知っている。先程聞いた。」
「ほぅ。流石は軍隊組織だ、情報が早いな。
それならば話も早い。2時間だ。
2時間後にここでマスターキーを引き渡せ。」
「!!!」
「さもなくば、この孫娘の命もないぞ。」
「おい、待てっ!2時間だとっ!?そんな短時間で――。」
「おじいちゃん、たすけてーっ!」
「ユリアーっ!!」
「……なんということだ。一体、俺はどうすればいいのだ。」