Forbidden Palace Library #J02 『真実の抹消者(後編)』

『真実の抹消者(後編)』


シルバニア王国 王都
繁華街展望台

たったったっ

ラグランジュ 「はぁ……はぁ……。階段長すぎないか、ここ。」

レオン 「展望台だからな。市街を見渡せなければ意味がない。
 着いたぞ、ここが最上階――……。
 ボイス、何があった?」

ボイス 「……ウェルナー将軍が死んだ。」

レオン 「!!!」

ラグランジュ 「うわっ……酷い刀傷だな。」

ボイス 「…………。」

レオン 「……――そういうことか、分かった。
 しかし、厄介な問題になるぞ。
 仮に将軍位を狙ったクーデターだと思われたら――。」

ボイス 「そう思われないためにも、当分将軍位は空席にする。」

レオン 「なるほど、そういう手もあるか。」

ラグランジュ 「何の話だ?」

レオン 「いや、内輪の話だ。さしたる問題ではない。
 ――それで、賊はなんだと?
 何か要求でも言ってきたか?」

ボイス 「ああ。マスターキーをよこせ、と。」

ラグランジュ 「マスターキー?」

ボイス 「そうだ。俺には未知の話で、何のことかさっぱり……。」

レオン 「聞いた事がある。王城の見取り図が刻まれた結晶体だろう?」

ボイス 「知っているのか、レオン!?」

レオン 「確かセンティス事件の時に、
 ブランドブレイ騎士団が王城を占拠した事があっただろう。
 その時から行方不明になっている。」

ラグランジュ 「センティス事件?」

レオン 「騎士団長様はどうやらご存じないようですな。
 シルバニアがまだ公国として出来たばかりの時代。
 その独立を認めず、二つの騎士団がシルバニアを占拠した事件を。」

レオン 「マスターキーはその時、
 騎士団に奪われたと聞き及んでおります。
 以降、今に至るまでずっと行方不明と。」

レオン 「いずれにせよ、この国にはもうないでしょう。
 あるとすればブランドブレイ王国のどこかに。
 歳月が経ちすぎている故、既にその存在を知るものなどいないかもしれませんが。」

ラグランジュ 「そのマスターキーとやらは、どんな形状なんだ?」

ボイス 「さっきの男は、
 ペンダント状に加工された
 透明な結晶体だと、言っていたが。」

ラグランジュ 「!?……ちょっと待ってくれ。」

レオン 「いかがなされた、騎士団長様?」

ラグランジュ 「透明な結晶体の、ペンダントだと?」

ボイス 「奴はそういっていた。」

ラグランジュ 「中に、幾何学紋様――つまり王城設計図の刻まれた?」

レオン 「何か心当たりがあるのか?」



 この結晶みたいなペンダント、なんだか綺麗です。

 何かうっすら浮き出てきたですよ?

 わぁい、おにーちゃんからのプレゼントですっ!


ラグランジュ 「そうだ、あれはリタが――!」

レオン 「???」

ラグランジュ 「いまから20年前、
 この国に移住してきたトリチェリーという姓名の人間がいるはずだ。
 居場所は分かるか?」

レオン 「トリチェリー?」

ラグランジュ 「そうだ、トリチェリー。
 確か、母方のベークランド家の親戚筋を頼って
 この国に引っ越してきたはずだ。」

ボイス 「ベークランドだと!?」

ラグランジュ 「なんだよ、いきなり大声出して。」

ボイス 「俺の嫁、イーディスが旧姓ベークランドだ。」

ラグランジュ 「なんだって!?」

レオン 「トリチェリ、トリチェリ――。
 そうだ、大通りにある四つ星の酒場の、
 隣に住んでいるあの家族か。」

ラグランジュ 「心当たりがあるのか。ならば、案内してくれないか?」

レオン 「わかった、場所なら分かる。俺が先導しよう。」

ボイス 「……ラグランジュ騎士団長殿。」

ラグランジュ 「うん?」

ボイス 「どうか頼む。ユリアを、ワシの孫娘を――。」

ラグランジュ 「分かった。待っててくれ。」

ボイス 「……ああ。」


▽……。



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