Forbidden Palace Library #J02 『真実の抹消者(後編)』

『真実の抹消者(後編)』


シルバニア王国 王都
繁華街 マックスウェル邸兼ディラック商店


ごんごんごんっ

ラグランジュ 「おい、マティルダ!
 いるんだろ、開けろっ!
 寝てるなら起きろっ!!」

マルガリータ 「夜中に迷惑ですよ、騎士団長さん……。」

ラグランジュ 「おい、マティルダ!」

「うっるさいわねー! とっくに閉店時間過ぎてるわよ!
 赤ちゃんが目を覚ますでしょっ!
 用事があるなら明日また来てちょうだい!」

ラグランジュ 「マティルダ、俺だ!」

「誰よ!」

ラグランジュ 「えーと――ふるえるわかめ、
 3日で分かる禁呪魔導、
 リタにあげた透明なペンダント!」

「…………。」


ばたんっ

マティルダ 「……何やってんのよ、こんな時間にこんな所で。」

ラグランジュ 「それはこっちのセリフだ。
 ちっとも姿を見ないと思ったら、
 お前いつのまにシルバニアに引っ越してたんだよ。」

マティルダ 「5年前の事件のすぐ後よ。
 あのとき建物が壊されて使い物にならなくなっちゃったから、
 荷物全部こっちに持ってきたのよ。」

ラグランジュ 「修理しろよ。」

マティルダ 「やーよ、面倒くさい。」

マルガリータ 「あら、本当に知り合いだったのですか。
 それに、私にあげたペンダントって、
 どういうことです……?」

ラグランジュ 「……なぁ、マティルダ。
 こいつ、お前が引っ越してきた時、
 お前の事憶えてたか?」

マティルダ 「ううん。それがどういうわけか全然。
 ……あれ、もしかして貴方も、
 リタちゃんに忘れられちゃってるとか?」

マルガリータ 「……あのー、一体何を話しているのですか?」

ラグランジュ 「全く持ってその通りなんだ、マティルダ。
 そうか、リタがマティルダの事を知っていたのは、
 20年前の話じゃなくて向かいに越してきたからか……。」

マティルダ 「それで、ロリコンの思い出話を聞かせるためにわざわざ深夜に?」

ラグランジュ 「ああ、そうだ。用件忘れるところだった。あとロリコンじゃない。
 ――リタのペンダントがここにあるだろう、
 それをこっちに渡して欲しい。」

マティルダ 「20年前にあたしが売ったやつ?
 確かに修理に預かってるけど、まだ作業終わってないわよ。
 それに、リタちゃんはどうなの?」

マルガリータ 「…………。」

マティルダ 「ちょっと、嫌そうな顔してるじゃない。
 どういうことよ。
 一度あげたプレゼントを取り上げるって、男として最低よ?」

ラグランジュ 「そうじゃないんだ。事情があって――。」

マルガリータ 「マティルダさん、一度そのペンダント、返してもらえますか?」

ラグランジュ 「リタ!」

マルガリータ 「貴方に愛称でそう呼ばれる筋合いはありませんっ。」

ラグランジュ 「…………リタ……。」

マティルダ 「んー。
 どういう事か全く話が見えてこないんだけど、
 筋としてはリタちゃんに返すべきよね。はい。」


しゃらんっ

マルガリータ 「ありがとうです、マティルダさん。」

ラグランジュ 「……もう一度だけ聞いてくれ。
 人命が掛かっているんだ。それも小さな子供の。
 どうしても脳裏で、あの時の光景と被るんだ。」

ラグランジュ 「だから、そのペンダントを――。」

ジェイムス 「そのペンダントを、渡して貰おう。」

ラグランジュ 「!!!」


▽……。



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