『真実の抹消者(後編)』
「……午後11時か。」
「ふっ、時間だ。約束のマスターキーは用意できたであろうな。」
「!!!」
「どうした。マスターキーを渡せ。
さもなくば、この貴様の孫娘を、
その眼前で――。」
「エルネストッ!」
「!」
「!!!」
「マスターキーはここにある!」
「……ほう、本物のジェイムス=エディソンが出て来たか。」
「本物!?どういうことだ?」
「ラントシュタイナー軍医を暗殺したのも、
アウグスト=ハーシェルを暗殺したのも、
私の名を騙るその男だ!」
「ふっ。
5年前の私に対する弑逆未遂のささやかな復讐として、
全ての責任を貴様に押しつけようと思っていたのだが。」
「その様子では、まだ諦めていないようだな。
――それで、貴様がマスターキーを
有していると言ったな?」
「そうだ。」
「予定とは違う人間が持ってきたようだが、
結果が同一ならばそれで構わぬ。
この見晴台からも識別できるように、証拠を掲げよ。」
「これだ。」
「なるほど。
宝石には劣り、ガラスよりは上回るその輝き。
確かに本物のようだな。」
「ユリアを、孫を解放しろっ!」
「ふっ。いいだろう、
これ以上は人質がいても邪魔なだけだ。
ほら、行け小娘。」
「うわぁぁあああん、おじいちゃぁぁああん、
ずっと目隠しで真っ暗で、
怖かったよぅぅぅぅぅうぁぁぁん!」
「いい子だ、ユリア。
よくぞ頑張った。もう大丈夫だ。
本当によく頑張ったな。」
「暗いの怖いよぉ、
もういやぁぁああうわぁぁぁん!
えぐっ、えぐっ。」
「――エルネスト、降りてこい!
マスターキーは、私の左胸のポケットだ。
欲しくば力づくで奪うがいい!」
「ふっ、面白い。まだこの私に楯突こうなどと考えるか。
ディ・セクト・イル 我が着地を和らげよ。
ランディング!」