Forbidden Palace Library #J02 『真実の抹消者(後編)』

『真実の抹消者(後編)』


シルバニア王国 王都
繁華街

エルネスト 「ふっ。ジェイムス。
 無駄なあがきは止め、マスターキーをこちらへ渡せ。
 そうすれば貴様の命は見逃してやる。」

ジェイムス 「……欲しくば、私を倒してからにするがいい。
 マスターキーは私の胸ポケットにしまった。
 重力魔導で一撃絶命を狙えば、マスターキーも破壊される運命にある。」

エルネスト 「……ふっ。
 いつのまにやら、余計な知恵まで付けたようだな。
 面倒な手間を掛おって。」

ジェイムス 「――あれから5年。更なる修行を積み、
 ヴェクター流脚部格闘術は極限の域に達した。
 全てが完璧に至った今、最早負ける訳などない!」

エルネスト 「世間を知らぬ者にありがちな、
 盲目で根拠なき自信、というわけでもなさそうだ。
 一体何が、貴様をそこまで駆り立てるというのだ。」

ジェイムス 「至上命題が全てだ。」

エルネスト 「ふっ、つまらぬ男だ。他に何も生き甲斐がなかったのか。」

ジェイムス 「……ただひとり、愛した女はいた。
 だが、エリカは――もうこの世にいない。
 450年近く昔の話だ。」

エルネスト 「450年前だと?」

ジェイムス 「私はかつて、貴方を暗殺すべく策略を巡らせた。
 しかし返り討ちに遭い、
 肉体は滅びた。ただ記憶のみを遺して。」

エルネスト 「ほう。仮に貴様の発言が戯れ言でないとして、
 どのようにして記憶を把持したまま転生したのか
 興味深いな。」

ジェイムス 「私にだってそのようなことは分からない。
 ただ、絶対命令と至上目的こそが
 それを可能にしたと信じている。」

エルネスト 「ふっ、非魔導的な考え方だ。」

ジェイムス 「非魔導的だろうが科学的だろうが、
 私に残されたのは至上命題のみ。それが全てだ。
 愛したエリカ=ラントシュタイナーはもうこの世にいないのだから。」

ボイス 「……ラントシュタイナー?」

ジェイムス 「そうだ。
 現代の人間が知るはずもない、
 遠い昔の――。」

ボイス 「バレンタイン港の、ラントシュタイナー家?」

ジェイムス 「!? なぜそれを!?」

ボイス 「その末裔なら――現代にまだ生きている。」

ジェイムス 「!?!?」


▽……。



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