Forbidden Palace Library #J02 『真実の抹消者(後編)』

『真実の抹消者(後編)』


シルバニア王国 王都
繁華街

エルネスト 「……バレンタイン港、
 大陸歴183年、新月の夜、三つ星の酒場の裏路地。
 なるほど、全てが繋がったぞ。」

ジェイムス 「……どういう……ことだ!?」

エルネスト 「あの時のエリカという娘、
 どうやら貴様の子供を宿していたようだな。
 残念ながら末裔たるあの軍医は、先日殺めてしまったが。」

ジェイムス 「なっ……貴様っ!」

エルネスト 「ふっ。だが安心するがよい。
 あやつの一人娘には手を掛けていない。
 まだ小さな赤子が、生き残っているはずだ。」

ジェイムス 「……なんだっ……て……。」

エルネスト 「どうやら貴様に守るべき対象が――
 いや、弱点ができたようだな。
 ならば貴様の子孫が人質だ。」

ジェイムス 「…………なっ!」

エルネスト 「もう一度でも私を弑逆しようなどと考えるなら、
 今度こそ血は絶えると思え。
 赤子に自らの命を守るだけの能力など、ないのだから。」

ジェイムス 「――――…………。」


がくっ

ジェイムス 「……エリ……カ…………。」

エルネスト 「ふっ。
 もはやこの男に、戦うだけの気力は残っていない。
 自慢の完璧な格闘術とやらも、無に帰したようだな。」

ジェイムス 「…………――――。」

エルネスト 「マスターキーを、渡すがいい。」






レオン 「ボイス。第6師団から連絡だ。
 『狙撃可能位置に到着、命令を待つ。』
 どうする。」

ボイス 「……失敗した時のリスクが高い。
 マックスウェルを信用していないわけではないが、
 外した場合の事を考えると危険すぎる相手だ。」

レオン 「見逃すのか?」

ボイス 「やむを得まい。
 発足したばかりで経験の浅い師団に、
 国家の運命を委ねる訳にはいくまい。」

レオン 「それは一理ある。
 だが、ここで取りこぼせば、
 また同じような危機が訪れるかもしれないぞ。」

ボイス 「その時までに、第6師団の練度を上げる。
 今は、まだ無理だ。
 今回の事を教訓に、次の憂いに備えるしかありまい。」

レオン 「……分かった。
 お前がそう言うなら従おう、副将軍ボイス。
 将軍不在下では、お前が最高司令官だ。」

ボイス 「……なぁ、レオン。」

レオン 「どうした?珍しく弱気な声で。」

ボイス 「俺はどこかで、運命を間違えていたのだろうか。」

レオン 「……何百何千何万回と繰り返される歴史の中で、
 常に最善の選択を選んだ結果が今なんだ。
 だから、目の前にある人生を精一杯全力で生きるしかない。」

ボイス 「……そうか。そうだな、ありがとう。」


▽……。



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