『真実の抹消者(後編)』
「マスターキーを、渡すがいい。」
「――――…………。」
「ふっ。
紆余曲折を経たが、ようやくこの手に入った。
これで、隠し部屋の位置が分かる。」
「――……どういうことだ。
そのペンダントがマスターキーというのは、
どういう意味なんだ。」
「ふっ。貴様には長いこと手足となり動いてもらった。
褒美にひとつ、いいものを見せてやろう。
近づくがよい。」
「???」
「この結晶体にライトの魔導を灯せば――」
「なっ、立体映像!?」
「そうだ。王城の立体見取り図が浮かび上がる。
これこそがマスターキーと呼ばれたもの。
王城の設計図にして全ての扉を開く鍵。」
「……それが、ペンダントの正体か。」
「ふっ、この通り隠し部屋も一目瞭然というわけだ。
これで後は魔導原本を入手するのみ。
失われた7枚全てが揃う日も近い。」
「失われた、7枚……?」
「だが、我々がそうたやすく王城に近づかせると思うか。」
「ボイス!」
「ほう。人質が戻ったことで威勢も取りもどしたか。」
「ここから先へは一歩たりとも進ませぬ!
我がシルバニア王立軍、
全軍を以て絶対死守をなす!」
「ふっ。よかろう、今日の所は退くとしよう。」
「……え?」
「隠し部屋の在処は、知らないのであろう?
ならば手掛かりに一番近いのは、
マスターキーを入手したこの私というわけだ。」
「!!!」
「焦る必要はあるまい。
永い永い時を待ち続けたのだ。
今更あと10年やそこらを待とうが変わらぬ。」
「…………っ。」
「ああ、そうだった。忘れていた。
ラグランジュ、ご苦労だったな。
貴様はもう用済みだ。」
「……!?」
「何を身構えている?
あのジェイムスという男が無力化した以上、
役目は終わりだと言っているのだ。」
「……それが、最後の命令か。」
「ふっ。そういうことだ。
後は貴様の好きにするがいい。
さらばだ。はーっはっは!」
「…………。」
「…………。」