Forbidden Palace Library #J02 『真実の抹消者(後編)』

『真実の抹消者(後編)』


シルバニア王国 王都
繁華街

ジェイムス 「――ラグランジュ。」

ラグランジュ 「…………。」

ジェイムス 「おかしいか、この私が。
 全ての人生を捧げ、育てた弟子をも失ってなお、
 エルネスト暗殺という至上命題を求めた私が。」

ジェイムス 「対魔導脚部格闘術は完璧を極めた。
 だが、行使する機会は奪われた。
 たったひとつの、小さな理由によって。」

ラグランジュ 「…………。」

ジェイムス 「あのエリカに、私の子供が生まれていたなど。
 まだ見ぬとはいえ、愛した恋人と自分の末裔を、
 どうして見殺せようか。」

ラグランジュ 「……後悔しているのか?」

ジェイムス 「いや、ただ虚しいだけだ。
 私の為してきたことは、一体なんだったのかと。
 我が人生とは、一体なんだったのかと。」

ラグランジュ 「…………。」

ジェイムス 「ラグランジュ。
 私はもうどこへも逃げない。どこへも行かない。
 国家反逆罪で逮捕するがいい。全ての罪を受け入れよう。」

ラグランジュ 「…………あと、15秒。」

ジェイムス 「……何がだ?」

ラグランジュ 「…………。」

ジェイムス 「ラグランジュ?」

ラグランジュ 「…………10。」

ジェイムス 「君の役目は、私の逮捕ではなかったのか。」

ラグランジュ 「……5、4、3……。」

ジェイムス 「さっきから一体何を数読んでいる。」

ラグランジュ 「2、1――――。」


ごーん ごーん ごーん ごーん ごーん ごーん

ジェイムス 「!?」


ごーん ごーん ごーん ごーん ごーん ごーん……。

ラグランジュ 「0時だ。」

ジェイムス 「言われなくても鐘の音で分かる。」

ラグランジュ 「今日で、あの日からきっかり20年。国外追跡の時効だ。」

ジェイムス 「なっ……――!?」


▽……。



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