Forbidden Palace Library #01 失われた7枚


王都シルバニア
住宅街

繁華街からやや離れた距離に位置するこの付近一帯は、市民に多くの住まいを提供している。
住宅街と言えども店舗が全くないわけではなく、細々と雑貨店などがひらかれている。
だが、その大半は利益よりも趣味で経営されているようだ。

あちこちの家々から楽しそうな声が聞こえてくる。


(一体、どこに逃げたんだろう……あれ?)

「グリフィス師団長、家と家の隙間に挟まって何やってるんですか?」

ベル 「ぎくっ。
 だだだ、誰の事かな?
 俺はそんな名前を知らないぞ。」

「……ひょっとして逃げようとして、
 家と家の隙間にはいったはいいけど
 そこから抜けなくなったんですか?」

ベル 「ぎくぎくっ。
 ななな、何の事かな?
 てんで記憶にないなぁ。」

「……じゃあ、そんなところで何やっているんですか?」

ベル 「一人でかくれんぼさっ!」

「じゃあそのままでも別にいいんですね。
 ではまた後で来ますね。
 では。」

ベル 「あうー。
 ごめんよぉ。
 俺が悪かったから見捨てないでぇ〜。」

「じゃあちょっとお尋ねしますけど……。」

ベル 「いやいや、そこはそれ、先に出してくれないかなぁ、ね?ね?」

「ウィンクなんかしても無駄です。」

「けっ。こうなったら俺は何も喋らないからな。」

「そうですか。
 じゃあまた明日来ますね。
 おやすみなさい」

ベル 「あうううううううー。
 ごめんなさいボイス将軍のおやつつまみ食いしたのは俺ですぅ〜。
 ご勘弁を〜。」

「一体いくつ食べたんですか?」

ベル 「2つですぅ。あううううー。
 あと先週の日曜日に、将軍の椅子に腰掛けて机の上に足を投げ出して花瓶を割ったのも、
 先々週の月曜日に、将軍の部屋の引きドアを間違えて押して壊したのも俺ですぅ。」

「……誰もそんなことまで聞いてないんですけど。」

ベル 「はっ!
 またしてもこの私を誘導尋問にかけるとは……。
 お主、なかなかやるな。」

(ベル師団長が勝手に喋ってるだけなんだけどなぁ……。)

「とにかく、自分の罪を認めるんですね?」

ベル 「あううううー。犯人は俺ですぅ。」

「ん?ちょっとまって下さい……クッキーを何枚食べたと?」

ベル 「2枚ですぅ。お願いだから早くここから引き上げてぇ。頼むよぉ。」

(……おかしいなぁ。
盗まれたクッキーは合計7枚だったはず。)
「ベル師団長、師団長が将軍の部屋を訪れた時、お皿の上にクッキーは何枚ありましたか?」

ベル 「10枚だったよぅ。頼む早く引き上げてくれぇぇぇぇぇ。」

(盗まれたのが7枚……残っていたのが8枚……。
 つまり最初に15枚のクッキーがあったはず。
 もっとも、ボイス将軍の記憶に間違いがなければの話だけど。)

「……ちょっとボイス将軍のところに行って確認して来ますね。」

ベル 「あうぅ。そんなぁ。お願いだから引き上げてぇぇぇぇ。」


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