Forbidden Palace Library #02 前例なき犯罪


王都シルバニア
繁華街

天高く、雲一つない青空。
澄み切った大気の下、繁華街は人々の活気に満ち溢れている。

大通りを挟んで一定間隔に植えられた木々。
その枝葉が降雪で白く染まるのも、そう遠い先の話ではないだろう。


アシスト 「さてと。
 とりあえず街に出てみたものの……これからどうするか。
 何かいい案はないか、行かず後家のエリーゼ君。」

エリーゼ 「だ、誰が行かず後家ですかっ!
 私はまだ23歳ですっ!
 アシスト師団長の方が年上で独身でしょっ!」

アシスト 「なんなら俺が嫁に貰ってやろうか?」

エリーゼ 「…………え?」

アシスト 「何赤くなってんだよ。
 お前、結構純情なんだな。いいことだ。
 はっはっは。」

エリーゼ 「蹴・りぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」


げしぃぃぃっ


アシスト 「い、いつもより痛てぇ……。」

エリーゼ 「こ、今度そんな冗談言ったら許さないわよっ!」

(エリーゼ師団長、いつもと剣幕が違う……怖いよぉ……。)

ユリア 「……んもぅ。ウィルバーちゃんたら鈍感ねぇ。」

「あ、ユリア師団長。」
(ウィルバーちゃん?
 ああ、ウィルバー=ロウクス=アシスト師団長のことか。)

アシスト 「ん?何が鈍感だって?」

エリーゼ 「ユ、ユリア師団長っ!」

ユリア 「ううん☆ なぁんでもなあいっ☆
 秘書ちゃん、あんまり邪魔しちゃだめよ☆ 馬に蹴られるわよぉ☆
 頑張ってねぇ、エリーゼちゃん☆」

エリーゼ 「へ、変なこと言わない下さいっ!」

ユリア 「きゃー、怖い怖い☆
 さてと。あたし夕飯の買い物してから帰るから☆
 じゃねー☆」

エリーゼ 「……まったくもう!」

アシスト 「……本当にさわがしい奴だな、ユリアは。
 それで、これからどうするか。
 闇雲に歩き回った所で犯人など見付かるわけもなく。」

エリーゼ 「……そうねぇ、こういうのはどうかしら?
 三人で同じ場所を調べて廻るよりも、ばらばらに行動した方が効率がいいはずよ。
 私が繁華街を調べて、アシスト師団長が裏路地を重点的に調べる、というのはどう?」

「私は?」

エリーゼ 「もちろんそれ以外の所を見回るのよ。」

「……非常にわかりやすい答えですね。」

エリーゼ 「もし犯人が見つかったら……そうねぇ。
 魔導の明かりを空に打ち上げるということで。
 秘書さん、そのぐらいの魔導なら、使えるわよね?」

「ええ、まぁ初等学校で一番最初に習った魔導ですし。」

アシスト 「よし、それで決定だな。
 張り切って犯人みつけるぞっ!
 ……まてよ、犯人をでっち上げて簡単に解決するという手も……。」

エリーゼ 「アシスト師団長、今何か言ったかしら?」

アシスト 「ああ、いや、なんでもない。
 とりかく張り切って犯人を捜さなくてはな。
 俺の給料がかかっていることだしな。」

「……アシスト師団長。
 ひょっとして師団長としての責任感とかじゃなくて、
 ただ単に減給を帳消しにする為だけに調査をしようとしてません?」

アシスト 「はっはっは、あたりまえじゃん。
 実験費用も色々と馬鹿にならないからな。
 ん?どうした?二人ともため息ついて?」

エリーゼ 「自分の胸に聞いて下さいっ!
 ……まあいいわ。
 じゃあ私はここを重点的に探すから二人とも他をお願いね。」

アシスト 「了解!」

「はーい。」

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