Forbidden Palace Library #02 前例なき犯罪


王都シルバニア
住宅街
工事現場

家々から漏れる魔導の明かりと共に、夕食を楽しむ家族の声も漏れてくる。
どんな会話が繰り広げられているのかまでは聞き取る事は出来ないが、そこに暖炉とは別の暖かさがあることだけは窺い知る事が出来る。

一定間隔に設置された街灯。照らされた路地の下には誰もいない。
そう、街灯の下には……。


「あ、いましたっ!あそこの屋根の上ですっ!」

アシスト 「なんで屋根の上なんかにいるんだよ……。」

マルス 「んんん、だってこの方が格好いいじゃん。」

「……それだけの理由でわざわざ屋根の上に?」

マルス 「うん。」

ベル 「あほかぁぁぁぁぁっ!」

「……マルスさん、
 一つ聞きたいことがあるんですけど……。
 なんで空のゴミ箱なんか爆発させようとしているんですか?」

マルス 「んんん。空のゴミ箱って底に腐敗ガスが溜まっているのが多いから、
 ちょっと火を入れただけですぐに爆発するんだ。
 ああ、あの爆発音が……うっとり。」

ベル 「ひょっとしてこいつ……ただ単に爆発音が聞きたくてこんなことやってたのか?」

(あ、あぶない人だなぁ……。)

マルス 「んんん。どうやら君達には爆発音のロマンがわからないようだねぇ。」

(ボイス将軍といい、この人といい、どうして変なロマンを持った人ばかりなんだろう……。)

アシスト 「……で、いくら融資してくれるんだ?」

ベル 「ちょっとまてアシスト、あくまでそれが第一かいっ!」

アシスト 「もちろん。で、いくらだ?」

マルス 「んんん。5万リル……」

「日本円換算で250万円ってところですね。」

アシスト 「我が友よっ!」

ベル 「おいこらちょっとまてぇぇぇぇっ!」

マルス 「……って言いたいけどお金無いから1リル程度なら。」

「日本円換算で50円ってところですね。」

ベル 「だからお前さっきから誰に説明しているんだよ?」

アシスト 「…………。
 マルス、すまないが君とのつきあいもこれまでだ。
 いい思い出をありがとう。」

ベル 「だぁぁぁぁぁぁぁっ!お前もころころ意見を変えるなぁっ!」

マルス 「……交渉決裂というわけか。
 んんん。まあ仕方ない。今日の所は引き上げるとしよう。
 では諸君、また明日っ!」

ベル 「ちょっとまてぇぇっ!」

「…………」

アシスト 「…………」


十分経過。


アシスト 「……マルス、何を企んでいる?」

マルス 「ゴミ箱の爆発。」

アシスト 「いや、そうじゃなくて。
 さっきから屋根の上でじっとしたまま何をしようとしているんだ?
 『では諸君、また明日っ!』と言ったきり動こうともしないし。」

「……まさか……怖くて降りれないとか?」

マルス 「あ、ばれた?」

ベル 「素直に助けてくれって言わんかいっ!」

マルス 「助けて。」

アシスト 「やけに素直だな。」

マルス 「んんん、俺田舎では素直のマルちゃんで有名だったから。」

「ま、まるちゃん……。」

アシスト 「お前の田舎ってどこだよ?」

マルス 「え?…………いや、そう急に聞かれても。」

ベル 「ちょっとまてこらっ!急に聞かれて何故困るっ!?」

マルス 「ああ、そうそう、セリフォス島。確か。」

「た、確かって……一体……。」

マルス 「んんん。固いこと言わないで。ね。そーゆーことにしといて。」

アシスト 「俺もセリフォス島出身だけど知らないぞ。」

マルス 「ああ、そうそう、確か氷都シェザ。そこが俺の故郷。そうそう。」

アシスト 「確かレナード副将軍がシェザの……」

マルス 「んんん、いや、実は港町アンヴェリアルサットの……」

アシスト 「……シェザの出身じゃなくてアンヴェリアルサットの出身……」

マルス 「やっぱりシェザなんだな、これが。」

ベル 「何威張ってるんだよお前は。」

マルス 「いいじゃん。」

ベル 「よくねぇぇぇっ!」

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