ガチャッ
「……な、何があった!?」
「何故ここにっ!?」
「そんな、馬鹿な……。」
「新記録ね……。」
「……どうしたアークライト?
まだ会議がはじまってから2時間しかたっていないぞ。
それなのに会議室に到着できるとは……。」
「きっと天変地異か何かの前触れですね。」
「うん。かもね。
…………。
ところで君たち、いま何かとても失礼なことを言わなかったかい?」
「気のせいですよ、きっと。」
「そうか。
じゃあそういうことにしておこう。
で、今日は一体何の臨時会議なんですか?」
「うむ。
アークライトも知っていると思うが……。
ここ数日のあいだに起きている事件のことだ。」
「というと、ベル君がそこの両開きの窓を開けようとして
間違えて手前に引いて壊しちゃった件についてですか?
それとも、クッキー缶を間違えて落として凹ませた……。」
「アークぅぅぅぅっ!黙っていろっていったじゃんかぁぁぁっ!」
「……ほう。
そうか、犯人はどっちもお前だったのか。
ベル、あとで話がある。会議が終わったらここに残れ。」
「あうー、ごめんなさいー、ボイス将軍ー、その怖い顔やめてくださいー。」
「知ってるか?笑顔で怒られる方がもっと怖いんだぞ?」
「……アシスト師団長。何故、私の方を見るのですか。」
「ああ、いや、別に。」
「で、事件ってなんですか?」
「うむ。ここ数日、街中のゴミ箱が突然爆発するという
前例のない奇妙な事件が発生していてな。
それも一・二件ではなく、立て続けに数十件もだ。」
「……爆発って、どういう風に爆発するんですか?」
「うむ。ほとんどは爆音だけで大した被害が出ているわけではない。
せいぜい交換の近い老朽品がいくつか壊れたぐらいだ。
どれも空のゴミ箱ばかり狙われて、わざと人的被害が出ないようにしている。」
「……そういえば以前、
爆発音が好きで、市街のあちこちに爆竹仕掛けてた師団長がいたな。
今頃どこでなにをしているやら……。」
「意外とあいつが犯人だったりしてな。」
「私の前任者、マルス前師団長ね……でも、まさか。」
「ここで話合った所で、
真実が出てくるわけではない。
そこで、犯人を捜索してもらいたいのじゃ。」
「わざわざ俺達が出なくても、市民兵に任せればいいじゃん。」
「うむ。本来ならそうするべきなのであろうが、
あくまでこの事件は隠密に調査を行いたいのじゃ。
大勢で捜索すると相手に気づかれてしまうかもしれんからな。」
「それで、誰が調査するのー? あ、あたしはパスね。このあと非番だから。」
「ふむ。とりあえず秘書は決定することにして……。」
「え?
わ、私ですかぁ!?
あのー、私はデスクワークが本職なんですけど……。」
「わかった。じゃあ君は本日付けで解雇……。」
「はいはいはい、やりますやります。
あー、身に余る光栄だなぁ。
もー最高。」
「……あまり嬉しくなさそうだな。」
「いや、そんな滅相もない。もう、とても。ええ。」
「そうかそうか。
やってくれるか。
頼むぞ、シルバニアの未来は君の肩に掛かっているんだ。」
(本当にそう思えてくるところがなんとも……。)
「あ、いえいえ、別に。」
「……それとエリーゼとアシスト、お前達も一緒に調査してこい。」
「ちょっとまてっ!なんで俺がっ!?」
「アシスト。
もし今回の事件を解決出来たなら……
先日の減給の話はなかったことにしてやろう。」
「このウィルバー=ロウクス=アシスト、
命に代えてでも必ずや犯人を
見つけだして参ります!」
「うむ、その心意気じゃ。」
「……え?
ち、ちょっと、アシスト師団長?
ど、どうしたの、いきなり敬礼なんて?」
「アシスト師団長が、急にまじめな顔になってる!?」
「では早速行って参りますっ!さぁ、俺の減給を帳消しにするためにっ!」
「……はぁ。やっぱり理由はそれなのね。」
「ん?どうした?ため息ついて?」
「自分の胸に聞いてみなさいっ!」
「……どきどき言ってるぞ。」
「そうじゃなくてっ!
んもうっ!
こんな馬鹿に構ってないで行きましょう、秘書さん。」
「あ、はい。」
「おい、こら、まてっ! 置いてくなっ!」