「アリス……。
もしよければ……。
君の入れてくれた紅茶が飲みたいのだが……。」
「え?あ、は、はい、喜んで……。」
(これでレナード師団長が私の煎れた紅茶を気に入ってくれたら……。
いえ、でもいいの。たとえ師団長のお茶くみ専属でも。少しでも側にいれるなら……。)
「なんだ?まだ用があるのか?」
「用があるのかって……別にレナード師団長のお店じゃないですよ、ここ。」
「あら?どうしたの?二人とも?何かあったの?」
(『…………レナード副将軍、紅茶が入りました』
『アリス、よければ君の口移しで飲ませてはくれないか?』
『え!?……あ、はい………こくっ………ん……』)
「それがどうかしたか?」
(それでそのまま……だ、だめよっ!
人が来たら見つかっちゃうっ!
ああっ!でも……っ!)
「断る。
町の治安が第一だ。
たとえ権利はあると言えども如何なる事情によってもそれが……。」
「アリスの命が……。」
「引き受けよう。
時として一国の存亡より大事なこともある。
それが金で買えない物だとするならば尚更だ。」
「10秒前に言ってたことと全然違いませんか?」
「気のせいだ。」
「よし。そうと決まれば早速命令を出して貰おう。」
「……仕方有るまい。アリスさん、紅茶はもう少し待ってくれ。」
「あ、え?は、はい……」
(……アシスト師団長、どうして私の邪魔をするの?……はっ!?
まさか……まさか……アシスト師団長もレナード師団長のこと……)
……なぁ。
なんとなく何か誤解されている気がするのだが……?」
「え?いえ、別に……誤解だなんて……」
(そんなっ!男性同士なんて……不潔よっ!
でもちょっと見てみたい気も……い、いえっ!駄目よそんなのっ!)
「城壁警備隊長のコペルニクスに私直筆の命令書を持っていけば大丈夫なはずだ。
…………。
ほら、これでいいだろう。」
「よし、これを持って行くぞ。」
「私はもう少し説教してから行くわ。
レナード師団長、いいですか?貴方は一応この国の副将軍なんですよ?
くどくどくど……。」
「おう。わかった。じゃああとでな。」
「お邪魔しましたぁ。」
「……アシスト師団長、私、負けません……。」
「……は?」