Forbidden Palace Library #03 花束を彼女に


王都シルバニア
住宅街

大通りから少し離れた区域に広がる住宅街。
繁華街から入ってくると路地が狭く感じられるが、それでも他の都市に比べれば充分な道幅を有している。これは戦時の行軍を考慮しての径だと言われている。
もっとも当の住人らにはそのような意識などなく、広い路肩は荷物置き場として使われてしまっているのが現状である。

店先には『ソフトブレッド』と刻まれた木彫りの看板がぶら下がっている。
小さなショーウィンドウ越しにみえる店内には、数種類のパンが綺麗に並べられている。


エリーゼ 「………くどくどくど……ちょっと、レナード副将軍、聞いてます?」

レナード 「アリス……。
 もしよければ……。
 君の入れてくれた紅茶が飲みたいのだが……。」

アリス 「え?あ、は、はい、喜んで……。」
(これでレナード師団長が私の煎れた紅茶を気に入ってくれたら……。
 いえ、でもいいの。たとえ師団長のお茶くみ専属でも。少しでも側にいれるなら……。)

「あ、まだやってる。」

レナード 「なんだ?まだ用があるのか?」

「用があるのかって……別にレナード師団長のお店じゃないですよ、ここ。」

エリーゼ 「あら?どうしたの?二人とも?何かあったの?」

アリス (『…………レナード副将軍、紅茶が入りました』
 『アリス、よければ君の口移しで飲ませてはくれないか?』
 『え!?……あ、はい………こくっ………ん……』)

アシスト 「おいレナード、ボイス将軍がいない今、全軍及び都市の全権はお前が握っているんだよな?」

レナード 「それがどうかしたか?」

アリス (それでそのまま……だ、だめよっ!
 人が来たら見つかっちゃうっ!
 ああっ!でも……っ!)

アシスト 「この町全ての街灯を全て消してくれ。少しの間だけでいい。」

レナード 「断る。
 町の治安が第一だ。
 たとえ権利はあると言えども如何なる事情によってもそれが……。」

アシスト 「アリスの命が……。」

レナード 「引き受けよう。
 時として一国の存亡より大事なこともある。
 それが金で買えない物だとするならば尚更だ。」

「10秒前に言ってたことと全然違いませんか?」

レナード 「気のせいだ。」

アシスト 「よし。そうと決まれば早速命令を出して貰おう。」

レナード 「……仕方有るまい。アリスさん、紅茶はもう少し待ってくれ。」

アリス 「あ、え?は、はい……」
(……アシスト師団長、どうして私の邪魔をするの?……はっ!?
 まさか……まさか……アシスト師団長もレナード師団長のこと……)

アシスト 「ん?なんだ?俺のことにらんで?
 ……なぁ。
 なんとなく何か誤解されている気がするのだが……?」

アリス 「え?いえ、別に……誤解だなんて……」
(そんなっ!男性同士なんて……不潔よっ!
 でもちょっと見てみたい気も……い、いえっ!駄目よそんなのっ!)

「で、どうやって命令を出すんですか?」

レナード 「城壁警備隊長のコペルニクスに私直筆の命令書を持っていけば大丈夫なはずだ。
 …………。
 ほら、これでいいだろう。」

アシスト 「よし、これを持って行くぞ。」

エリーゼ 「私はもう少し説教してから行くわ。
 レナード師団長、いいですか?貴方は一応この国の副将軍なんですよ?

 くどくどくど……。」
アシスト 「おう。わかった。じゃああとでな。」

「お邪魔しましたぁ。」

アリス 「……アシスト師団長、私、負けません……。」

アシスト 「……は?」


▽中央公園へ行く
▽城壁へ行く
▽繁華街へ行く



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