Forbidden Palace Library #03 花束を彼女に


王都シルバニア
城壁

シルバニアの都市を守る城壁は、時折『白き守護者』と呼ばれることがある。
この都に住む人々は、この城壁こそが大陸で最も堅固であると信じて疑わない。
もっとも、実際に戦火を浴びたことは有史上まだ一度もなく、真偽の程は定かではないが。

どんよりとした灰色の雲とは対照的に、城壁の上に灯された魔導の明かりは煌々と輝いている。


アシスト 「で、コペルニクスって誰だ?」

「さぁ?ちょっと聞いてみますね。
 (またあの高枝切りバサミの人だ……)
 えーと、あのですね、こちらに城壁守備隊長のコペルニクスという方は……」

兵士 「なんだ、俺様に何か用か?」

「………………はいっ!?
 えーと……。
 ですから城壁守備隊長のコペルニクスさん……」

コペルニクス 「だからこの俺様に何の用だ?
 ん?さてはこの俺様の華麗なる高枝切りバサミの話を聞きたくて来たのか?
 そうかそうか。では話してやろう。いいか、このシャフトが防水コーティング……」

「……嘘でしょ?」

コペルニクス 「いやいや、本当に防水コーティングなのだ。でだな……」

「いや、高枝切りバサミの話ではなくて。
 本当に貴方が城壁守備隊長なんですか!?
 ……何かの間違いですよね?」

コペルニクス 「なんだ、その話か。
 本当だ。
 これが俺様の身分証明書だ。」

(…………。
 本当だ……。)
「……よく入隊できましたね……。」

コペルニクス 「何故かは知らぬが、担当の面接官がいつまで経っても現れなくてな。
 その年度は志願者全員が書類選考のみで合格となった……ん?どうした頭抱えて?
 そうか、一刻も早くこの高枝切りバサミの話を聞きたいのだな!?」

「いえ、そうではなくて……。」
アシスト 「城壁守備隊長コペルニクス。
 これがレナード=セルシウス副将軍直筆の命令書だ。
 ここに書かれているとおり町中全ての街灯を消して貰おう。」

コペルニクス 「……確かにレナード副将軍のサインだな。
 承知した。
 俺様がなんとかしてやろう。」

(師団長に対して俺様って言うこの人って一体……。)


五分後。


コペルニクス 「…………というわけで副将軍直々の命令が出た。各自、持ち場を回り街灯を消して回ること。
 それと同時に各兵士隊長は暗視魔導を自分にかけておくこと。
 何か異常があった場合は俺様に報告。以上。ちゃっきんちゃっきん。」

「……最後の音は一体……。」

コペルニクス 「では事が済むまで俺様も師団長達についていってやろう。」
(師団長に対して『ついていってやろう』って言うこの人って一体……。)

アシスト 「ふむ。なんか気にくわねぇけどまぁいいか。
 ……さてと、ユリアの奴を探しに行くか。
 あいつの事だ、暗いところから明るい所へと移動するに違いない。」

「明るい所ですか……とすると……。」


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