「あ、エリーゼ師団長。ええ、そうです。」
「といってもまだ予定の時間まで30分もあるわね。
どうせまだ誰もいないでしょうけど……。
……先にゆっくりお茶でも飲んでましょう。」
こんこん。
「エリーゼ=ラントシュタイナー、入ります。
…………え?私が5番目?
いつも会議室に入るのは私が1番最初なのに……。」
「……あれ?
…………。
……目の錯覚、でしょうか?」
「うん?どうしたんだい?
なにか面白いことでもあったのかい?
よければ僕にも教えてくれないかなぁ?」
「ベル師団長やユリア師団長やレナード副将軍が早くここにいるのは納得できますよ。
でも、どうして?
どうして、アークライト師団長がここにいるんですか?」
「あたしが昨日からずっとアークをここで監視してたの☆」
「そうそう。
ジュリアさんったらひどいんだよ。
どこにも行かないようにって鍵までかけて、作戦を練ろうって……。」
「アーク!しーーーーっ!」
(ジュリア?
ああ、ユリア師団長の事か。
……アークライト師団長って時々発音が訛るんだなよぁ。)
「そういえばこの殺風景な部屋に珍しいですね。
ガラスの花瓶というのも洒落てますし。
……どなたが持ってこられたんですか?」
「へへぇ、あたしあたし☆
一昨日アークに貰ったのぉ☆いいでしょお☆
でねでね、せっかくだからみんなに見せようと思って☆」
こんこん。
「ウィルバー=ロウクス=アシストだ。入るぞ。
……ん?
ちょっとまて、アーク、何故おまえがここにいる?」
「私と同じ事聞いてる……。」
「ねぇねぇ、ウィルバーちゃん、この花綺麗だと思わない?」
「ん?ああ。それがどうした?」
「エリーゼちゃんも欲しいんだって☆
ウィルバーちゃん、プレゼントしてあげたら?
喜ぶわよぉ☆」
「ち、ちょっとユリア師団長!私はそんなこと一言も……っ!
…………。
そりゃあ、ねぇ。………欲しいけど……。」
「ん?何?エリーゼちゃん?最後の方がよく聞こえなかったんだけど?」
「いえ、なんでもないです。」
「……さて。
全員揃ったところで会議を始めるとするか。
今日の会議の内容はただ一つ。……ユリア師団長。」
(あ、ボイス将軍いないからレナード副将軍がその代理なんだ。)
「街灯破壊魔?」
「発生してるのか?聞いたことないぞ?」
「……ひょっとしてまたマルス前師団長ですか?」
「ううん。
違う違う。
なんでも銀色の外套を身に纏って昼間でも人目をはばかることなく……」
「ちょっとまて。なんでマルスの奴じゃないって断言できるんだ?」
「…………え、ま、まぁそれだけは確実なのよ☆うん☆
でねでね、その銀色外套男を秘密裏に捕まえて欲しいの。
できれば師団長クラスの人間だけで☆」
「質問です、ユリア師団長。
その程度の事で有ればわざわざ秘密裏などにしないで一般の兵士に
調査させた方が早いと思うのですが……」
「え、えーと。
それがね、その銀色外套男ってのが……えーと……。
とにかく秘密裏なのよ。」
「で、秘書にまた一任すると。」
「ち、ちょっとまてくださいよぉぉぉぉっ!」
「いや、今回は違う。」
「……え?」
「エリーゼ=ラトシュタイナー、ウィルバー=アシスト。
以上二名にこの調査を命令する。
副将軍命令だ。」
「……なんだか納得がいかねえなぁ……。」
「ボイス将軍がいない今、実質的には将軍命令であることを忘れるな。」
「…………わかりました。では早速調査に行って参ります。」
「よし。」
「ぶつぶつぶつ……なんで俺がこんなことばかり……。」
ばたん。
▽……。