「……やっと、やっと謁見室に着いた……」
「うんうん。ついたねぇ。」
「喜びもひとしおでござるな。」
「秘書です、入ります!」
「……どうした、やけに威勢がいいな?」
「ええ、なんかこの職業について初めて達成感を味わった気がするんですよ。」
「よぉ。」
「おや、グリフィス殿。久しぶりでござる。相変わらずで何より。」
「ああ、こいつ相変わらずの馬鹿で……。」
「アシストォォォォォォォォっ!」
「おかえりなさい。」
「あ、エリーゼ師団長。」
「これで師団長全員とグラン駐在大使が揃ったな。」
「……やっぱり俺はクッキー代を軍事予算の中に入れるのは反対だぜ。」
「アシスト!貴様にはクッキー道がわからんというかっ!?」
「あたりまえだろ、どこにクッキー代を国家予算から出す国がある?」
「ここに。」
「……なぁ、やっぱりその口調にデジャヴを感じるんだが気のせいか?」
「……あ、あのー、
ま、まだその議題続いていたんですか?
私が昨年度の予算案を取りに行く前もそんな事言ってませんでした?」
「ああ、あれからずっと議論が白熱してな。」
「だからそんな金があったら魔導研究費によこせって。
俺が有意義な実験台探しに使ってやるから。
その方が俺の……いや、国の為だぜ?」
「ロウクス君っ!
……あ、いえ アシスト師団長っ!
また実験台とか言って!」
「きゃー、ロウクス君だってぇ☆エリーゼちゃん大胆☆」
「ユ、ユリア師団長っ!」
「だからそんな金があったらさぁ……」
「却下。」
「まだ何も言ってねぇぇぇぇぇぇっ!」
「って、あのー、師団長の皆さん?」
「それよりさぁ、このシルバニアの町をもっと明るくしない?
私が夜でも出歩けるように☆
ね☆」
「そういえば、もうすぐ謁見の時間なのにレミィティアーナ女王陛下来ませんね。」
「左様、左様。」
「いいか、そもそもクッキー道というのはだな、
伝承によれば……我々が大陸歴と呼んでいる年号が出来る以前、
そう、現在旧暦と呼ばれている年号が用いられていた時代……」
「あー、また始まったよ。」
「ってレナードちゃん、何書いてるの?
A計画?
さっきもなんか同じ様な事書いていなかった?」
「気のせいだ。議論を続けたまえ。」
「続けさせてどうするんですかぁっ!やめさせてくださいよっ!」
「ひょっとしたらレミィ女王の事だから、
またどこかで寝ているのかもしれないなぁ。
誰か様子を見て来た方がいいと思うんだけど?」
「ねえねぇ、A計画ってなになに?
あっ!何よ、
隠さないでもいいじゃない。」
「気にしないで議論をつづけたまえ。」
「だからやめさせてくださいってば!」
「なぁ、エリーゼ。
今のうちに予算請求書に勝手に記入しちまうってのはどうだ?
もちろん記入するのは俺だけど。」
「いえ、ダメです。きちんと会議という手続きを踏んでからという規則です。」
「きつい事言わないでさ、な?」
「ダメです。」
「みんな、僕の話聞いていないでしょ?」
「拙者は聞いておるぞ。」
「……エリーゼ。」
「な、何よ……。ま、真顔で迫ったって……ダメなものはダメ……な……のよっ!」
「…………ちっ。」
「ちっ、じゃなぁぁぁぁいっ!蹴りぃぃぃぃぃぃっ!」
「ぐはっ……い、痛ぇ……」
「……今、何か鈍い音がしなかったか?」
「柱に何かがぶつかった様な音でしたね。」
「アシスト、床の上で寝てると風邪を引くぞ。」
「えー?何々?どうしたの?
ウイルバーちゃんまた何かやったのぉ?あれぇ?
エリーゼちゃん、顔が真っ赤ぁ☆」
「な、なんでもありませんっ!」
「うん。そうか。
じゃあ僕がちょっと様子見てくるね。
もしどこかで寝てたらここまで僕が連れてくるよ。」
「左様か左様か。」
「……その時わしは悠然とゼルイリアスに立ち向かい……」
「いてててて……。
ちょっとぐらい加減しろよな……。
どうでもいいけどおっさん、だからゼルイリアスと戦ったのは俺だってば。」
「なにを!昔話には脚色が必要だと古今東西決まっておるだろうが!」
「決まっているんですか?」
「そうか。口答えするのか、秘書。ならば減給……」
「あ、いい案思いついた。
将軍。
秘書の給料の昇給分をクッキー代に回すというのは?」
「……なるほど。名案だな。」
「ええっ!?そんなぁぁぁっ!?」
「では多数決だな。
秘書の昇給分をクッキー代に回していいと思う人は挙手!……5人。
反対の人……1人。」
「ち、ちょっと待ってくださいよぉっ!
エリーゼ師団長だけじゃなくて、
私も手を挙げてるじゃないですかぁっ!」
「軍事予算最終決定案に発言権があるのは師団長及び将軍のみだからな。」
「……なぁ、挙手の数が足りなくないか?」
「そういえば……あれ?アークライト師団長は?」
「あれ?アーク?さっきまでいたはずなんだけど……柱の後ろ?……いないわねぇ。」
「じゃあここか?」
「いえ、絨毯めくってもいないと思うんですけど……」
「そういえば……」
「どうしたんですか?」
「確か、レミィティアーナ女王陛下がいないから様子見てくるとか……」
「左様、左様。」
「そういえば、ついでに連れてくるとも言っていたわね……」
「左様、左様。」
「もしかしてグラン駐在大使……。」
「左様、左様。すべて見届けていたでござる。」
「だったら止めてくださいよぉぉぉぉぉっ!
ってことは……誰が探しに行くんですか?
……あのー、どうして皆さん私の方を?……ひょっとして……」
「秘書っ!早く追いかけろっ!
アークライトよりも早く女王陛下の身柄を確保するのだっ!
いますぐにだっ!」
「そっ、そんなぁぁぁぁぁぁぁっ!」