王都シルバニア
城壁
雪は城壁の上にも積もる。
その白き壁の上で周囲を監視する兵士達とは別に、臨時に出動命令を出された兵士達がスコップを手に必死に雪を下ろしている。
城壁から下ろされる雪の粉をかぶったのであろうか、シルバニアの正門前では一人の兵士が上を向きながら高枝切りバサミを振り上げて何やら抗議している。
「あ、グラン駐在大使。」
「おお、これは将軍の秘書殿。」
「あっ!その紙っ!」
「左様か左様か。この副将軍任命書が何か?」
「それ、返して下さいっ!私が預かっていなくてはいけないものなんですっ!」
「左様か左様か。
だがグリフィス殿に渡すと約束してしまったものでな。
やはり約束したものを反故にするわけには……」
「とか言いながらどこに行くんですかぁぁぁっ!?
ああっ!グラン駐在大使っ!?
……見失ってしまった……。」
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