Forbidden Palace Library #05 異存なき決定


王都シルバニア
中央公園

雪雲という名の季節の渡航者が落としていく白い粉は美しく、そして儚い。
その美しさに惹かれるかのように子供達は天を仰ぎ見、そしてその冬の落とし子を口にしようとするが、白い結晶はすぐに姿を消してしまう。
一人の少年が、より高いところで雪を口にしようと凍り付いた噴水の上へとよじ登っている。


(あの男の子、噴水の上ではしゃいでいるけど
 間違って氷が割れて池の中に落ちたりしないかな……。
 まあ大した深さないから大丈夫だと思うけど……でもちょっと心配。)


ばしゃああああん。

「だ、大丈夫?」

デニス 「冷たいよぉっ!あ、うん、ありがとう、大丈夫。
 でもこれで風邪引いたらどうしようそれでそのまま熱が下がるどころか
 頭を冷やす氷も溶けちゃってその水で溺れたらどうしよううわーん。」

「……別に溶けた氷で溺れることはないと思うんですけど……」

デニス 「それでそのまま部屋中水浸しになっちゃったらああもう僕どうすれば
 ダメだよお姉ちゃんが溺れちゃうだってお姉ちゃん泳げないもん。
 でも負けたらダメだって亡くなったお父さんが言ってたし」

「はい?」

デニス 「そうだよ負けちゃだめっていうのがノーベル家の家訓なんだ
 ところで家訓ってなんだろうなんとなく首が折れる感じだけどそれって怖いよ
 お願い見捨てないでお姉ちゃんやっぱり僕レタス畑で生まれたんだえーんえーん」

「い、いえ、あの、別にそんなことはないと思うんですけど……」
(……どうして私、子供にまで丁寧語使っているんだろう?)
「よく分からないけど、貴方のお姉ちゃんだって素直に言えば許してくれると思うよ。」

デニス 「ぐすっ、ぐすっ。うん。ありがとう。
 勇気を出して聞いてみるよ、僕。
 僕は本当にニンジン畑で生まれたのかどうか。」

「いや、そうじゃなくて……」



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