Forbidden Palace Library #05 異存なき決定


王都シルバニア
住宅街

住宅街は繁華街よりも街灯の数が少ない。
だが決して暗いわけではない。他の町の住宅街に比べれば遙かに明るい部類に入るだろう。
地面に積もる雪も街灯に照らされて白く輝いているものの、その人通りの少なさ故に辺りはどことなく寂しさを醸し出している。

パン屋ソフトブレッド。 木彫りの看板のぶら下がったそのお店の中から、人の話し声が聞こえてくる。


アリス (『君が欲しいんだ、アリス。俺とつきあってくれ』なんて言われたら……
 い、いえ、そんなわけないわ。つきあってくれだなんて……
 そう、きっとフェンシングの事なのよ。レナード師団長、突剣の使い手ですもの……)


からんからん

デニス 「あの、おねぇちゃん……」

レナード 「おや、デニス君、お帰り。」

アリス (『でも私、レイピアやエストックなんて持ったことないです……』
 『いや、これから覚えればいいんだ。手取り足取り教えて上げよう』
 『レナード師団長の手……暖かい……』『君への愛があるからさ。』『あっ!』)

デニス 「あ、レナードおにぃちゃんが来てるーっ!わーいっ!」

レナード 「どうした?びしょぬれじゃないか。早く着替えないと風邪引くぞ。」

デニス 「うん。でも、あのね、その前に一つおねぇちゃんに聞きたいことがあるんだ……」

レナード 「アリスさん、デニス君が……アリスさん?」

アリス 「あ、は、はいっ!?
 あら、デニスお帰り……何やっていたのよ、びしょぬれじゃないっ!
 ほら、早く着替えてっ!んもうお風呂にも入れなきゃ……」

レナード 「ふむ……アリスさん、よければ私がお風呂湧かそうか?」

アリス 「あ、じゃあお願いします……ごめんなさい、レナードさん。」

レナード 「いやいや、気にするな。
 えっと……ここが風呂場か。水は張ってあるようだな。
 リ・メレル・エルウィ 集いし水滴よ熱を持て ウォーム!


ぼっ!

レナード 「ふむ……いい湯加減だ。」

アリス (……ひょっとしてレナード師団長のお風呂湧かそうか、って……
 それは私に一緒に入らないかって言っているのかしら……
 だ、だめよ、そんな、まだ早いわっ!それにデニスだって見てる……)

レナード 「デニス君、お風呂湧いたぞ。」

アリス (『いや、お風呂では私の心は温まらない。だから俺の心は君が暖めてくれ。』
 『そんな……恥ずかしい……だめよ……そんなの……』
 『アリス、君の一番美しい姿が見たいんだ……』『あっ……』)

デニス 「わーい、ありがとう!
 ……ねぇ、やっぱりレナードおにぃちゃん、
 僕の本当のおにぃちゃんになってよ!」

アリス 「な、なにを言うのっ!」

デニス 「だっておねぇちゃんこの間
 レナードおにぃちゃんに本当のおにぃちゃんになってもらうには
 きせいじじつを作ればいいって……」

アリス 「……デニス、ちょっといらっしゃい。」

デニス 「うえーん、何が悪いのかよくわかんないけどごめんなさいぃぃぃっ!
 ところできせいじじつってなにやっぱりキンモクセイとかツツジの仲間なのかなぁ
 えーんやっぱり僕レタス畑で生まれたのかもしれないよぉえーん」


・・・

(……何か凄いことになっていそうな気がする……入るのはやめておこう。)



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▽城壁へ行く
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