Forbidden Palace Library #05 異存なき決定


王都シルバニア
住宅街

住宅街は繁華街よりも街灯の数が少ない。
だが決して暗いわけではない。他の町の住宅街に比べれば遙かに明るい部類に入るだろう。
地面に積もる雪も街灯に照らされて白く輝いているものの、その人通りの少なさ故に辺りはどことなく寂しさを醸し出している。


アーク 「……みつけたぞ、アシスト。」

アシスト 「アークっ!方向音痴のお前が何故追ってこれるっ!?」

「だってここってアークライト師団長の家の側じゃ……」

アシスト 「……ちっ!俺としたことが迂闊だったっ!」

アーク 「アシスト、そこを動くな…………はっ!」


しゅっ!


ぴたっ!

アシスト 「…………!」

「槍を……アシスト師団長の額と紙一重の所で止めてる……。」

アーク 「いいかアシスト。以後、ジュリアさんを泣かせるような事があれば……」

アシスト 「わ、わかった、俺が悪かったっ!ほれ、紙はやるっ!」

アーク 「よし。まあいいだろう。……紙?うん、なんだい、これは?」

エリーゼ 「ロウクス君っ!話はユリア師団長から聞いたわよっ!」

アシスト 「げっ、エリーゼ!」

エリーゼ 「……たっぷりお説教させて貰うわ。ちょっといらっしゃい。」


ずるずるずる

アシスト 「痛ててててっ!耳を引っ張るなっ!ちぎれたらどうするっ!」

エリーゼ 「だったら立ってちゃんと歩きなさいっ!」

アシスト 「……エリーゼ。」

エリーゼ 「な、何よ、急に真剣な顔しちゃって。」

アシスト 「この間手を握った時みたいに優しく……」

エリーゼ 「……け、蹴りぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」


げしぃぃぃぃぃっ!


ごんっ。

「……凄い音しましたけど……大丈夫ですか?
 あれ?
 エリーゼ師団長、顔赤いですよ?」

エリーゼ 「な、なんでもないわよっ!」

アシスト 「きゅう」

エリーゼ 「も、もうっ!
 変な事言わないでよっ、ロウクス君っ!
 ちょっといらっしゃいっ!」


ずるずるずる

「……襟捕まれて引きずられてる……」

アーク 「ねぇ、寄書君。ところでなんだい、この紙は?」

(あ、いつものアークライト師団長に戻ってる。)
「そういえばアークライト師団長、先ほどの会議は最後の方しかいませんでしたものね。
 実はですね、今度レナード副将軍が将軍に昇格……」

アーク 「うん?何々?貴方の名前?
 書けばいいのかな?
 えーと、ケイン=アークライト、と。すらすらすら。」

「したことにより副将軍の席が……ってええっ!?
 ち、ちょっとっ!
 アークライト師団長っ!何やっているんですかっ!?」

アーク 「え?僕のサイン。
 ……はい。出来た。
 綺麗でしょ?結構字には自信が有るんだ。」

「…………嘘、でしょ?」

アーク 「さぁ?
 そう言われても僕にはさっぱり。
 ところでこの紙、何のアンケート?」

「……アンケートじゃなくて副将軍任命書なんですけど……」

アーク 「そうだったのか。
 ということは、僕が副将軍になっちゃったってことかい?
 うん。それは大変な事だ。」

「……ええっ!?ち、ちょっと待ってくださいよぉぉぉっ!」



▽…………。



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