Forbidden Palace Library #07 夜明けの前に


王都シルバニア
ハーシェル邸

城壁の側、最も明るい区画に建てられたハーシェル邸。
シルバニアの建築法に合わせて塗られた白い家屋は、城壁の上から発せられる魔導の明かりを反射しややまぶしくも感じる。特にこんな真夜中であれば尚の事だ。

それにも関わらず家の中の至る所から、丁寧にも窓という窓の全てから室内の明かりがこぼれてきている。
家の主が寝ていようが寝ていまいが、常にこの家には明かりが灯っていることで有名なのである。


アーク 「……Zzz……むにゃむにゃ……。」


・・・


「……あれ?」

レナード 「どうした、秘書?」

「いえ、いま一瞬アークライト師団長がいたような気がしたんですが……。」

レナード 「?
 …………。
 いないぞ?」

「ですよねぇ……私の気のせい、ですかねぇ?」

レナード 「恐らくな。仕事の連続で疲れているんだろう、秘書。」

(……一体誰のせいで疲れているんだと……)

レナード 「ん?何か言ったか?」

「いえ、別に本音なんて一言も。」

レナード 「本音?」

「ああ、いえいえ、なんでもないです。」

レナード 「わかった。ならば早く帰って休みたまえ。」

「え?いいんですか?……レナード将軍って実は優しかったんですね。」

レナード 「ただし、この仕事が終わったら、の話だが。」

「前言撤回します。しくしくしくしく。」



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