Forbidden Palace Library #07 夜明けの前に


王都シルバニア
パン屋ソフトブレット

木彫りの看板の掲げられた小さなお店。
建物自体には相当の年期が入っていると思われるが、綺麗に掃除されているために古くささをあまり感じさせず、むしろどこか懐かしい雰囲気を醸し出している。

ショーウィンドウ越しに見える店の中では、茶色の髪を持った女性と、鎧を着た金髪の男性が見つめ合っている。


エリーゼ 「……ねぇ、どういうことよ?」

アシスト 「ん?エリーゼ。」

エリーゼ 「ロウクス君が何か企みを起こすんじゃないかと思って、
 ちょっと前から様子を見てたんだけど……
 レナード将軍が書いたラブレター、アリスさんに渡してないってこと?」

アシスト 「ああ。あいつの書いたラブレターならここにあるぞ。」


ひょい。


エリーゼ 「え?じゃあ……?」

アシスト 「いや、
 ああすればレナードの奴あわてて告白に行くだろうと思ってな。
 どうせ告白するなら手紙で伝えるよりも言葉の方がいいだろ?」

エリーゼ 「……んもぅ。すぐにそうやって色々企むんだから。」

アシスト 「まぁいいじゃねぇか。
 結果的にオッケーなわけだし。
 ……せっかくだから、ラブレター読んでみようぜ。」


がさがさ


エリーゼ 「ちょっと、ロウクス君っ!人の手紙を読むなんて趣味の悪いこと……」

アシスト 「『愛しの君へ……突然のお便り申し訳ありません。
  かねてより、どうしても貴方に伝えたい言葉があったのですが、
  長いこと言葉にすることが出来ませんでした。』」

エリーゼ 「ちょっと、ロウクス君っ!?」

アシスト 「『ありきたりな言葉かもしれません。
  が、私にはそれ以外に自分の感情を素直に表現する
  適切な言葉を知りません。お許しください。』」

エリーゼ 「いい加減にしないと……」

アシスト 「……君がまだ城壁守備隊長で、俺がまだ旅人だった頃。
 君の美しい姿は俺の目を奪い、引き寄せて離さなかった。
 あの時の胸の高鳴りを、俺は一生忘れないだろう……」

エリーゼ 「……え?」

アシスト 「……いつもは照れてうまく言えないけど、
 夜明け前の今なら言葉に出来そうな気がする。
 だから、しっかり聞いてくれ。」

エリーゼ 「…………。」

アシスト 「エリー、君のことが好きだ。」

エリーゼ 「………………ばかっ。」


ぎゅっ。


アシスト 「…………。」

エリーゼ 「…………。」

アシスト 「好きだぜ、エリー。」

エリーゼ 「……ばかばかばかっ。」

アシスト 「…………。」

エリーゼ 「…………。」

アシスト 「……なぁ。」

エリーゼ 「?」

アシスト 「抱きしめてて今ものすごく実感していることがあるんだ。」

エリーゼ 「なに?」

アシスト 「…………エリーゼって、」

エリーゼ 「ん?」

アシスト 「………………胸、ないんだな。」

エリーゼ 「蹴っりぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」


どごっっっっ

アシスト 「……きゅう。」

エリーゼ 「もう、知りませんっ!」




お・し・ま・い。




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