(……やっと終わった。
この書類を作戦会議室に置いて今日の仕事はおしまい、と。
ふぅ。これでやっと休める。)
(あれ?
扉から明かりが漏れてる?
……誰かいるのかな、こんな時間に?)
「秘書です、入ります。」
「秘書、お前が犯人かっ?」
「……え?……は、はい?何がです?」
「私の机の上に置いてあった封筒を盗んだのはお前か!」
「ち、ちょっと待ってくださいよ。
何か誤解してません?
えっと私、身におぼえがないんですけど……」
「ふむ。そういえばそうだったな。
確か秘書はあの会議の後、ずっと書類整理をしていたんだったな。
なるほど、とりあえず犯人候補からはずすとしよう。」
「……誰のせいで私が一人で書類整理をする羽目になったと?」
「アシストあたりだな。仕方のないやつめ。」
「いえ、明らかにレナード将軍のせいだと思うんですが……。」
「何か言ったか、秘書?」
「……いいんですけどね、
そういう答えが返ってくるのはなんとなく予想ついてましたし。
しくしくしく。」
「ということは、犯人は……誰だ?」
「犯人?……ってことは、なにかあったんですか?」
「机の上にあった重要機密書類を納めた封筒が何者かによって盗まれていたのだ。
犯行推定時刻は作戦会議終了後、
すなわち午後4時30分から私が帰ってくる午後7時30分までの3時間だ。」
「で、午後7時30分までレナード将軍は何やっていたんですか?
まさかとは思いますが、
どこぞのパン屋に閉店時間まで入り浸っていただなんて言いませんよね?」
「………………。」
「……ち、ちょっと待ってくださいよ!
その間は一体なんなんですかぁっ!?
その間はぁぁっ!?」
「気にするな。」
「気にしますっ!!!」
「……こほん。恐らく犯人は会議室に出入りしている誰かだ。」
「あのー、念のためお伺いいたしますが、
封筒の中に入っているのが実はミルククッキーだったとか、
その数が7枚だったとかいう話じゃないですよね?」
「いや、違うから安心しろ。ちゃんとした手紙……いや、書類が入っている。」
「ああ、よかった。
いえ、ただなんとなくそう続きそうな口振りだったもので。
ところで書類には何が書かれているんです?」
「文字が書かれている。」
「いえ、あの、そういう意味ではなくて……」
「エングリシア語が書かれている。」
「要するに答えたくないんですね?」
「然り。」
「……あのー、また何か企んだんですか?」
「企むとは失礼な。まるで私が犯罪者みたいではないか。」
「え?違ったんですか?私はてっきり……」
「何か言ったか、秘書?」
「あ、いえいえ、何もいってません。
ええ、もちろんですとも。
やだなぁ、私が本音を言うわけないじゃないですかぁ。あはははは。」
「……本音?」
「あ、やばっ。」
「なにがやばいのだ、秘書?」
「えっと、よ、要するにその封筒の中身を見た犯人を探せばいいんですね?」
「秘書。
もし何の報酬も期待せずに手伝ってくれるのであれば、
先ほどの本音発言とやらは聞かなかったことにしてもよいのだが?」
「ええ、もちろん手伝わせていただきますとも。
いやー、嬉しいですー、はいー。
……しくしくしく。」
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