Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
中央公園

遊歩道の両側に植えられた落葉樹は、その梢から小さな葉を芽生えさせている。
その枝の上では小鳥がさえずり、木々が再び緑色を纏うのを心待ちにしているようだ。
周囲の景色が色を帯びてきたからであろうか、冬には冷たく感じられたその石畳もこの季節にはむしろ暖かく見えてしまう。

噴水から吹きあげる水しぶきの回りで、子供達が追いかけっこをしている。



「あ、アークライト師団長。
 一週間もどこ行っていたんですか?
 みんな心配していましたよ?」

アーク 「うん。ちょっと用事があってセントラル港まで。」

「それはそうとアークライト師団長、
 次期師団長候補のJさんってどんな方かご存じですか?
 って聞いても知らな……」

アーク 「あ、帰って来るんだー。」

「……え?お知り合いなんですか?」

アーク 「うん、小さい頃よく遊んでくれたよ、ジュリアス兄さん。」

「ジュリアス兄さん?
 次期師団長候補の人の名前って
 ジュリアスっていうんですか?」

アーク 「うん。
 小さかった僕たちの面倒をよく見てくれたんだ。
 特に僕のことを弟のように可愛がってくれて。」

「……幼なじみなんですか?アークライト師団長の?」

アーク 「うん。昔よく一緒に隠れんぼとかしてたよ。
 でも僕が鬼になると行方不明になるとかで、
 いつも隠れる役ばかりだったけど。」

「……隠れる役でも行方不明になりそうなんですけど。」

アーク 「うん。結局行方不明になったけど、どうして知ってるの?」

「いや、それはなんとなく予想つくような……。」

アーク 「一度なんかはジュリアス君の家でかくれんぼしてて、
 気が付いたら食器棚の中にいたこともあったけど。
 あそこは結構狭かったなぁ。」

「……どうして食器棚?」

アーク 「さぁ、それが僕にもさっぱり。」

「…………聞いた私が馬鹿でした。」



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